ホイップクリーム
「なぁ指からホイップクリームが出るようになったって言ったら信じるか?」
そう言っておれは彼女のクリームソーダを少し豪華にしてあげた。
「えっ?どういうこと?」
彼女は聞き返したが、豪華になったクリームソーダをみて少しだけ驚いた顔をしてから、ニッコリと笑った。
ある日突然指からホイップクリームが出るようになったのだ。
人差し指を突き出して少し念じればホイップクリームが出てくる。
少し退屈していたとはいえ、こんなことがあるのだろうか。
もしかしたら商売に使えたりテレビに出られたりするかも。なんて話していた。
「ねぇ、それ指のどこから出てんの?穴でも空いてるの?」
彼女がおれに尋ねる。
「よくわかんないんだよね。爪の間から出てんのか、何もないところから出てるみたいなんだけどさ。」
「なにそれちょっと不気味ね。」
少しだけ微笑んだ。
「まぁ細かいことはいいじゃないか。」
「それもそうね。」
ーーー数日後
「この暑いのにまたホットコーヒー飲むの?」
「だってホットのほうがうまいじゃん?」
「まぁいいや、それよりさ、見て見て!
この前とったあなたの動画をSNSにあげたらバズっちゃってさ、疑ってる人が大半なんだけどテレビ局から取材させてくれってメッセージが届いちゃった!」
「おいおい、そんなことしてたのかよ。」
「いいじゃないせっかくの能力なんだし。テレビ出ちゃいなよ!」
「それは俺も出たいって言ったけどさ、勝手に話を進めないでくれよ。」
「なに?おこってるの?」
「怒ってないけどさ、順序ってものがあるでしょ。」
「怒ってるじゃないの!」
「お前が勝手なことするからだろ!」
「なによ!そんなしょっぱい能力で調子に乗っちゃってさ。」
「おれがいつ調子に乗ったよ!」
「見せびらかしてきたじゃない!」
「そんなつもりじゃ「もういいわ。あたし帰るから。」
彼女が席を立つ。
「まてよ!」
おれは追いかける。
お勘定をしていたら彼女は見えなくなっていたけど、きっと駅の方に向かったのだろう。
駅前の飲屋街まで来た。
彼女はどこまで行っちゃったんだ?
ん?なんだ?
「離してください!」
「ゲヘヘ!こんな時間に1人で出歩くなんてお間抜けちゃんだこと!なぁ!」
「それにまぁまぁかわいいじゃんか!」
「離しなさいよ!この変態ども!」
「おーこわいこわい!ヒャッハッハッハッ!」
彼女が酔っ払い2人組に絡まれている!
助けなくては!
「まてぃ!彼女から手を離せ!」
「なんだテメェは!?」
「その娘の彼氏だ!」
「なんだとぉ!おい!やっちまえ!」
「くそ!クズどもめ!くらえ!」
おれは腕を振りホイップクリームを指先から放った。
ホイップクリームは酔っ払いの眼球に見事命中した。
「ぐわぁ!なんだこれは!」
「いまだ!にげるぞ!」
「うん。」
こうしておれは彼女と仲直りすることができた。
結局おれはテレビにも出ず、バズった動画はCGということでことなきを得た。
彼女のパンケーキを少し豪華にしてあげたら、
太っちゃうからやめてよ!と笑いながら言った。
暇つぶしに。