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1話 目がさめたら

頭が痛いな。


・・・不意にそんなことを思った。

ガンガンと殴られているような痛みと、

締めつけられているような痛みを感じる。



それまでは気にならなかったはずなのに、

意識しだすと、耐え難い痛みが襲ってくる。


「やめて」と叫ぶけれど、声は出ない。



痛みは、なおも増していく。



「お願いもうやめて。」

「もう分かったから。」

「もういいから。」


誰に向かって叫んでいるか分からないまま、

でも明確な「誰か」に向かって、叫ぶ。




『・・・全てを忘れて、眠れ』




叫びに呼応するように、誰かの声が響いた。



聞き覚えのない声。

でも、深く、優しい声。


その声に抗う術が分からずに、私は操り人形のように目を閉じた。


頭の回線が壊れてしまったのかのように、ぷつりと痛みが途切れる。

続けざまに、強い眠気が襲ってきて、私は意識を手放した。






*****************






「・・・・・・い、おい、いい加減、起きろよ。」


誰かが遠慮なく私の体を揺さぶっている。


うるさいな。いい気持ちで眠っているのに。と思いながら、

体を揺さぶる手を振り払おうとすると、はっと息を呑む音がした。


「おい!気づいてるんだろ!早く起きろ!」


慌てたような声と同時に、揺さぶる力が大きくなる。

・・・うっとうしい。寝かせてほしい。


諦めてされるがままに揺さぶられていると、

声の主は焦れたようにグイッと胸ぐらを掴んできた。

力強く引き寄せられ、さすがに驚きで眠気が遠のく。


「・・・ア、アラン様!」


周りには他にも誰かいたようで、私の胸ぐらを掴む無粋なやつをたしなめている。

が、時すでに遅く、私は諦めて目を開けることにした。


揺さぶってる段階で止めてくれれば、まだ眠っていられたのになぁと

思いながら目を開けると、目の前いっぱいに金髪碧眼の少年の顔が広がる。


・・・声からイメージしていたよりは若い少年だった。

自分で揺さぶり起こしたくせに、私が起きたことに驚いているのか、

ガラス玉のような澄んだ青色の瞳を丸くしている。


続けて、周囲の人が息を呑む声が聞こえた。

でも、目の前にいる少年の存在感が大きすぎて、

私は周りを見渡すことはせず、彼の顔を見つめた。


驚きに歪んでいるのに、整ったきれいな顔をしているな、と思った。

そして、それを意識してしまったら、距離の近さに慌ててしまって、思わず目をそらす。


「・・・カティア・・・だよな?」


そんな私に気づいてから気付かずか、

少年はどこか戸惑ったように私に問いかけてきた。




『カティア』


聞き覚えのない響きに、頭の中を疑問符が飛び交う。


カティアとは誰だろう。

でもとりあえずは否定しておかなくちゃ、と口を開く。


「私はカティアじゃないわ。私は・・・」


・・・続く言葉が見つからなかった。

頭の中が真っ白だ。


私はカティアじゃない。

そんな名前で呼ばれた記憶はない。


なら。それなら。



「・・・私は、誰?」

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