第1部・第4話 ~森の冒険
「な、なにこれ!?」
汐は、先ほどまでの姿とは全く違うものになった自分の姿に、悲鳴をあげました。
突然変な空間に囚われたと思ったら、親友の凪をさらわれ、そして今、自分はアニメでよく見る魔法少女の姿になっていました。
そんな急展開に、汐の頭の中は大パニックです。
その汐を落ち着かせるように、トリアと志保が声をかけてくれました。
「気にしたら負けだ。早く行こう。早くお前の親友を助け出さないとな」
「力に選ばれたなら文句は言わないよ。さぁ、森へ行こう」
まだ事態が呑み込めていない汐でしたが、今は凪をさらったあの女性を追いかけるのが先と、それ以上のことを飲み込んでうなずいて答えました。
「わかりました。よろしくお願いします!」
* * *
そして三人は、街はずれの森の前に立っていました。
森の中からは邪悪な気配が強く感じられます。魔法少女になりたての汐でも感じられるくらいに。
でも、退くわけにはいきません。この奥に、親友の凪が囚われているのですから。
「行くぞ。汐、お前は魔法少女になったばかりなんだから、無理はするなよ。そして油断しないように」
「は、はい……」
トリアの言葉に、汐は少し怯えながらも、そううなずき返しました。その瞳には、怯えと、親友を心配する気持ちがこもっています。
そして三人は見つめあってうなずくと、森の中に入っていくのでした。
* * *
深い深い森の中を三人は歩いていきます。
まるでその森は、中の人を惑わせ迷わせ、侵入者を逃すまいとするかのようです。
「かなり深い森だな……。志保、マッピングはしっかりしてくれよ」
「あいあいさー。えーと、ここがこうなって……あれ、違うかな? あ、こうだこうだ」
「一体、凪はどこに……?」
志保に声をかけるトリアと、時々間違えながらも、地図を作っていく志保。
そして汐は、周囲に気を配りながら、凪のことを気にかけていました。
それが、隙になったのでしょうか。
「きゃっ!」
「汐ちゃん!?」
突如、汐の悲鳴が届き、二人が背後を振り返ると、そこに汐の姿はありませんでした。代わりにそこにあったのは大きな穴。二人は慌ててその穴に向かいます。
「大丈夫か?」
「は、はい……。でも、なんでこんなところに落とし穴が……?」
穴をのぞきこむと、深さ1メートルほどのその穴の底に、びしょ濡れの汐の姿がありました。穴の底には膝くらいの高さまで水がたまっていて、そこに落ちたようです。
「あの女魔の手下が掘ったのかな?」
「普通森に落とし穴があるのはおかしいからな。そうかもしれないな」
そう言葉を交わすトリアと志保。そして志保は、手を一振りして、魔法でロープを作り出し、それをたらしてあげます。
そのロープを握って、汐は穴から脱出することができました。服は水でびしょびしょですが。
そこに。
「うききっ! ひっかかったひっかかった!」
耳障りのする声に、三人が声のしたほうを向くと、そこには……
* * *
そこには、子供ぐらいの大きさの、悪魔のような異形がよだれをたらして、戦闘態勢をとっていました。それを見た三人は、武器を作り出して構えます。
トリアは騎士のような剣、志保は身の丈ほどありそうな大きな弓、そして汐は、短い杖です。
「うききっ!」
叫び声をあげて、小悪魔は汐に襲い掛かりました! 汐はグレムリンを払いのけようと杖をふるいますが、グレムリンはそれをひらりと交わし、その鋭い爪の生えた腕を、汐に降り下ろしました。
「きゃっ!」
血と布が飛び散り、汐の肩に一筋の傷が刻まれました。傷からは血が滴り落ち、衣装の肩口を血で染めます。肩を抑えた彼女は、改めて、痛みと戦いの怖さに震えました。
再び襲い掛かろうとするグレムリン。ですがそこに。
「させない!」
汐をかばい、その剣でグレムリンの爪を受け止めるトリア。自分を助けてくれた騎士少女の姿に、汐は痛みと怖さを乗り越えるほんの少しの勇気をもらいました。
(そうだ! 凪を助け出さなきゃ! こんなところで怖がってはいられない!)
改めて、汐は杖を構えなおします。その目はグレムリンをにらみつけて。
強い想いは力になる。
その言葉を証明するかのように、杖の先の飾りが、強い魔力に輝いていきます。そして。
「えーい!」
杖から光の矢が放たれ、グレムリンを貫きました!
一瞬、何が起こったかわからないグレムリンでしたが、すぐにそれを察して悲鳴をあげました。
ですが、時既に遅し。急所を貫かれたグレムリンは、断末魔の悲鳴をあげながら四散していったのでした。
読んでくださり、ありがとうございました!