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駄目な幼馴染たち

今回は幼馴染二人の欠点と、異世界へ移動をメインにしてます

「よお、和博!相変わらずガリ勉だなあ!」


時計の短い針が5の数字を超えたあたりで、直人が俺の肩を叩いてくる。教室で見た様子とは打って変わり、かなり砕けた様子である。


「俺は天才じゃないんだ。毎日コツコツやらんと、直人や真理に置いてかれるだけなんだよ」


「俺は置いて行かないぜ、ハニー」


教室とはうって変わった様子で、直人が肩を組んでくる。俺はそれを顔を顰めて振り払う。これがこいつの本性だ。


「和博!今日こそ俺と一緒に夜の全裸散歩に行こう!それからラブホに直行だ!」


「行くか!この同性愛者の露出狂!」


俺は直人の胸をどつく。これがこいつの本性である。同性愛者にして、露出狂。しかも狙われているのが、俺。俺はいたってノーマルである。同性愛者を否定するつもりはないが、自分が同性愛者になることはない。それに露出なんてしたくない。


「ちょっと、和博を誘惑しないでよ!」


そこに突然、真理が現れた。狙ったとしか思えないタイミングである。というか、こいつの場合、近くに潜んでいた可能性があるので、本当に狙っていたのだろう。


「私が和博のものなんだから!」


こいつもこいつでとんでもない発言を平気で飛ばす。幸い周囲に人の気配はない。テスト期間でもないこの時期に、わざわざ遅くまで図書館に残っている人は少数なのだ。


だが、こいつの場合、それは嗜好に走りやすい環境にある、ということに他ならない。


「………真理、お前、何してた?」


制服が変に胸のあたりに食い込んでいる真理を、俺はジト目で見る。


「縛ってた」


いい笑顔で真理が親指を立ててくる。その光景に俺はため息をつく。


「出来れば和博が縛ってくれれば――」


「しない。するわけない」


「突っ込んでくれてもいいよ?はやく〇女じゃなくなりたい」


俺が脊髄反射的に返すと、真理がさらに踏み込んでくる。こいつはずっとこれなのだ。頭はいいし、運動もできる。スタイルもいい。だが、中身がドMでド変態。何故か俺をご主人様扱いしてくる。


「おい、和博の初めてを貰うのは俺だ」


すると今度は直人が変なところに食いついてきた。その言葉に、俺は思わず天井を見上げる。これが実態だ。これが真実だ。この二人は優秀だが、別のところで何かが狂ってる。それを表に出さないように、俺は裏でこいつらの行動を制御してきたのだ。だから離れられない。放っておくと、何をしでかすかわかったもんじゃない。だから常に傍にいて、監視しなくちゃいけない。これまでは。そしてこれからも、この関係は続けていくのだろう。このどうしようもない、奇妙な三角関係を。


2人が言い合っている中、俺は二人を遠目で見る。結局のところ、この二人も俺と離れるつもりはないのだろう。俺自身も、この関係が崩れる未来は見えていない。俺が見えている未来は、結局真理の魔の手から逃げられない、ということくらいだ。間違っても直人ではない。


「おい二人とも、そろそろ人が来る――」


あまりにも馬鹿らしく、あまりにも慣れてしまった非常識な日常に、俺は首を横に振りながら踏み込んでいく。


ずっと続くと思っていた。終わらないと思っていた。こんなあほらしい、日常が。


音を立て、崩れた。崩れ始めた。


ギシギシと何かが悲鳴をあげる。その音に、二人も即座に気付く。周囲を見渡し、俺と同様に、それを見た。


空中に穴が空いていた。そこから深淵が覗く。


「異常事態!?え、なにこれ!?」


すぐに真理が驚いて俺の前に立つ。後ろじゃないのかよ。


「真理は下がれ!」


俺は真理の肩を引く。だが、真理は動かない。


「ぐふふ、この位置なら和博を庇えて心配してもらい、もし何かあっても私が全てを受け止められる!」


駄目だ、こいつ。ドMの本性が発揮されている。


「くっ、これで塞げるか!?」


直人はなぜか服を脱ぎ、空中の穴に投げつける。そのままパンツ一丁になった。ちなみに服はそのまま穴の向こうに消えていった。


「なぜ脱ぐ!?まずは別のもん当てろよ!」


服から行くとかおかしいだろ!ここは図書室であり、使い古した新聞とかあるのだ。まずはそれを投げるべきである。塞ぐ、という案は悪くなさそうだったけど。結局こいつもあほだ。


穴が広がる。ギシギシと音を立て、周囲のものを引き寄せ始める。


「お、おおっ!?」


一番近くにいた、パンツ一丁の直人が最初に引き込まれる。かなりやばい状況である。直人のパンツ一丁のせいで、変な絵面になっているけど。


「直人!」


俺は前に出て直人の腕を掴もうとした。だが、その手は空を切る。


「うそ、だろ………?」


何も掴めなかった、自分の手を見る。それから目の前にある、空の裂け目を見つめる。さすがにこんなわけわからんもんに特攻する勇気はない。吸引力とかも働いるわけじゃないので、こんなものに入るわけがない。直人は何故か、入って行ったが。


「すまない、直人………」


お前は謎の現象の、尊い犠牲となったのだ。俺は警察に通報するため、スマートフォンを取り出す。


「うわあ、見事な穴………」


真理もその穴を覗こうとする。危ないぞ、と俺が忠告しようとすると、真理が何かを踏みつけ、滑る。


穴に向かって。俺はとっさに真理を支える。が、既に俺たちの体は穴の中に半分、入ってしまっていた。


「「――あ」」


穴の中に吸い込まれながら、俺は何が原因で真理が足を滑らせたのかを視認する。


――直人のパンツだった。あの野郎、なんつー置き土産してくれるんだ。

置き土産(パンツ)………

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