可憐なる妄想乙女はどこへ行く
JKとか恋愛とかが、みんな好きなんやろ、と言う事で書き始めました
なのに何故か、ニューヨーク州の面積を調べる羽目になりました。
なんでいつもこうなるんだ
私の名前は田中。
どこにでもいる普通の高校生。中肉中背で幸が薄そうな顔って言われる。薄幸の佳人って事なのかな?特に目立った特徴はない。何もない。私には何もないのだ。勉強も普通、運動も普通、帰宅部は嫌だという理由だけで入った文芸部でも目立った活動をしない。ただ小説を読んでるだけ。小説というかラノベ読んでるだけだ。そんな感じ。特に何もないのだ。この世界のヒロインではないのは間違いない。とにかく私は普通の高校生、花のJK、永遠の17歳だと思っている。
私の事なんかどうでも良くて、3年生になって憧れの西原君と同じクラスになれたのだ。その西原君は文武両道の学校一の優等生。特に成績は常に1位で、全国模試でも上位に名前が掲載されるくらいの秀才なんだ。しかもバドミントン部の主将を務めている。スラっとした細身の体形だけど、前腕とふくらはぎの筋肉がモコっと膨らみ、血管がボコボコと盛り上がっているところが男性的で魅力的なのだ。男性的な魅力とは裏腹に、顔は中性的でやや幼く見える。小顔で切れ長な目に小ぶりな鼻、薄い唇どれも整っているし、肌も色白で艶やかで綺麗だ。とにかく彼は私と違って特別なんだ。
正直なところ、なんで西原君がうちの学校に居るのかよくわからない。我らが日野西学園は、進学校としては中途半端なレベルなのだ。多くの生徒は、”名前は聞いたことがある”程度の大学に進学し、上位層が頑張って有名大学にギリギリ滑り込みセーフくらいのレベルなのだ。
何のとりえもない冴えない高校の事なんか、どうでも良いよね。とにかく西原君と同じクラスになれてしかも、隣の席もゲットしてしまうというオマケ付きだ。この時のために、私の高校生活はあったといっても過言ではないね。だってあの西原君の隣の席だよ。お近づき(物理)になっちゃったよ。なんてちょっとはしゃいでみたりしているけれど、まだ会話をしたことは無い。でもきっと親愛度的な面でもお近づきになれるはず。とりあえず今は妄想の世界だけで西原君と恋人ごっこをしている。女の子はごっこ遊びが好きだからね。そんな幼さを残すところも私の魅力かな。
太陽の暖かい光でアクアマリンのように輝く湖のほとりで、琥珀色のウッドチェアに座りながらお気に入りの本を読んでいると、淡い緑の光が差す幻想の森から西原君の声が聞こえてきた。
「田中! お待たせ!」
「待ってなんかいないわ。ここは時間の進み方が周りとは違うもの。」
「田中は今日も読書かい? 君がここで本を読んでいると知の女神が顕現したかのような錯覚に陥りそうだよ。神々しいまでの美しさだ。」
「そんな言葉が君の口から聞ける日がくるなんてね。ふふ、まずは紅茶でもいかがかしら」
そう言って、指をパチンと鳴らすと千年樹から切り出したテーブルの上に紅茶が注がれたティーカップが二つ現れた。実は私は、もうほとんど居なくなってしまった魔法使いの末裔の一人なのだ。この美しい湖も森もすべて私の魔法。私と西原君だけのもの。そんな二人だけの世界で、紅茶を飲みながら他愛もない話をするのが今の私にとって何よりも幸せな時間なのだ。
っていう妄想が最近のトレンド。だけど、西原君と実際に会話したことが無いから会話が続かないことが大きな問題なんだよね。やっぱり実際に西原君とお話する必要があるね。リアリティを追求するためには重要な課題だよ。魔法使いがどうとか言ってる時点でリアリティもへったくれもないけれど。それはそれ。
私も西原君とおしゃべりするタイミングを見計らっているんだけど中々みつからなくてこまってしまう。休み時間、西原君はいつも後ろの席の山本とおしゃべりしてる。山本がいつも珍妙な話をふって、西原君を困らせているのだ。山本が居なければ、きっと西原君にも隙ができて会話するチャンスができると思うんだよね。
ちなみに山本は珍妙な話をする以外は特に何もない背景モブ。常識的に考えて西原君と会話をする資格は無い。
「西原さん、将来の夢はなんすか? ちなみに僕はドングリですかね。コロコロと転がって、お池のドジョウと仲良くなりたいわけですよ。そしてドジョウと恋をして、駆け落ちしてしまうという夢があるんですよ。どうっすかね。ロマンありません?」
山本がまたなんか言ってる。今すぐトラックに轢かれて転生してくればいいのに。
「ドングリかぁ。夢があっていいね。そんな素敵な夢があって山本君がうらやましいよ。ロマンについてはよくわからないけど、駆け落ちする前に、そのドジョウを紹介してね。」
西原君が困って何とか会話をつなげようと頑張ってる。
「僕の夢は、そうだなぁ。ニューヨークだね。アメリカ人が沢山住むような立派なニューヨークになって。社会に貢献したいんだ。もちろん、そのためには英語の勉強も頑張るよ。あと、よく自由の女神像を作っては叩き壊してるよ。だいたい週7ぐらいのペースかな。」
流石、西原君!世界的な大都市になることが夢だなんて! まさに規格外! この年でそんな覚悟があるなんて! やっぱり西原君は私が見込んだけはあるね。私の見る目は間違ってなかった。それに夢に向かって具体的に努力してるところも素敵だね。なんで叩き壊すのかはよくわからないけど。笑顔で自由の女神像を叩き壊す西原君の姿を想像したら胸がキュンキュンしちゃう。しかも超ハイペース。おそらく毎日作っては叩き壊してる。日課なんだね。西原君の日課が知れてよかった。
その夜、私は夢を見たんだ。私は自由の女神像になってしまっていたの。そうしたら巨大なドジョウになった山本が現れて私に向かってハドソン川を下ってきたの。何だかとてもいやらしい顔だった。夢中で
「西原君助けて!」
って叫んだら、ニューヨークになった西原君がすっくと立ちあがってくれたの。大きさは北海道の二倍近いニューヨーク州だったよ。ニューヨークシティなんて、限定的なもんじゃなかった。流石は西原君だと思わされたね。西原君は私に向かって声をかけてきたの。
「May I help you?」
すかさずそこで私はこう答えたの。
「そこの山本をぶち殺して!」
そしたら、
「Oh・・・Please speak Englesh. I cannot understand what you are saying.」
だってさ。日本語が通じないの。西原君とは住む世界が違うんだなって思わされちゃった。
「Kill the f〇ckin’ YAMAMOTO! Right Now!」
とりあえず身振り手振りを交えながら一生懸命伝えようとしてみたんだけど、合ってるのかわからない。だけど山本をぶち殺して欲しいのは伝わったと思う。
そしたら、西原君がこちらに倒れてきて、山本もろとも私も壊されちゃった。
私、西原君に壊されちゃった、もうお嫁にいけない。責任とってよね。なんて泣いてたら朝を迎えたの。不思議な夢だった。
その日から時々、西原君に壊される夢を見るようになって、私は西原君の事がどんどん好きになっていった。夢の中の西原君も徐々に地図みたいな平面的なニューヨーク州から、衛星写真のような三次元的なニューヨーク州になっていってる。これって西原君の夢が実現に近づいてるって事なのかな。なんだかよくわからないけれど、私は西原君の自由の女神になれそう。そんな気がして、17歳の春は心弾んで過ぎていってる。
田中は女神




