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岡部涼音 朗読シリーズ 涼音色~言の葉 音の葉~

冬の朝

作者: 風音沙矢
掲載日:2018/08/23

冬の朝、壊れた目覚まし時計の音で目が覚めた。

乾いて悲しい音がする。

君がおいていった目覚まし時計。

ずっと捨てられずに、

寝室のサイドテーブルに置いたままになっていた。

「まだ、なるんだね。」

そう言いながら、目覚まし時計を手に取ってベルを止めた。


「ありふれた恋だと小説にもならないわね。」

君はそう言って、この部屋を出ていった。

「あ・り・ふ・れ・た・恋って、なんだよ」

僕にとっては、世界で一つしかない恋だったのに。

あれから、1年たったけど。僕の歯車は狂ったままだ。

毎日、仕事には行っているよ。

同僚とだって、笑って話しているよ。

おふくろにだって、たまに電話してる。

まじめな青年やってます。

やってるけど、モノクロの世界なんだよ。


冬は、いやだね。

さっき着けたストーブの前に居ても、

凍えた体はなかなか温まらない。

ましてや、凍ってしまった心は、融けやしない。

もともと好きではなかった季節だけど、

君が寒いといってベッドにもぐりこんでくるから、

まんざらでもなかった。

少し冷えた君の体をくるむように抱きしめて、キスをする。

あー、あのぬくもりが恋しい。

君がおいていった目覚まし時計が、

鳴らなければ思い出さなかったのに。


鬱々と、桜の花も、夏の太陽も、

お気に入りの銀杏の並木道が、黄金色に輝く季節も、

心弾ませることなく一年が過ぎてしまった。

僕が、こんな失恋も肥しだとうそぶいてしまえば良いのだが、

生身の人間には、きついだけだ。

君が知ったら、女々しいと笑うだろうな。

でも、良いよ。笑ってくれ。

もう少しの間、傷心のままでいいよ。


そんなことを考えていたら、目覚まし時計がまた鳴った。

乾いて悲しい音。

君がおいていった目覚まし時計。

手に取ってベルを止めた。

「もう、鳴るなよ」


最後まで、お読みいただきまして ありがとうございました。

よろしければ、「冬の朝」の朗読をお聞きいただけませんか?

涼音色 ~言ノ葉 音ノ葉~ 第2回 冬の朝 と検索してください。

声優 岡部涼音が朗読しています。

よろしくお願いします。


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