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7、ノーメイククイーンは白血病

 開催日は11月10日に決まった。3月1日にインターネットなどでノーメイククイーンコンテストの企画を発表した。応募条件は18〜30歳までの女性で、4月1日から9月30日までの6ヶ月の間、化粧、パーマ、毛染め、マニキュアをしないことだ。

 締切日までには全国から約100人の出場希望者が書類を送ってきた。10月10日に一次審査の書類選考で30人にしぼられた。10月15日には二次審査の筆記試験が行われ、10月20日に通過者20人が発表された。10月25日に三次審査の面接が行われ、10月30日に通過者が発表された。11月10日の最終審査会のコンテストに残ったのは10人だった。横浜のコンテスト会場には、約1000人の観覧者が集まった。

 「審査の結果ノーメイククイーンは、高野美幸さんです」社長が18歳の女子大生の美幸をステージの中央に呼び寄せた。

 「おめでとう」審査委員長になった旅立ちの会長山下静夫がトロフィーを渡そうとした。しかし、美幸は受け取ろうとしない。司会をしている社長も受け取るように勧めるが、どうしても受け取らない。

 「私には受け取る資格がありません」美幸はロングヘアーのかつらを取った。美幸の髪は丸坊主のように短かった。会場内がざわめいた。

 「もしかして何か病気なの?」思い当たることのある社長が聞いた。社長はいとこを3年前に白血病で亡くしていた。

 「私、白血病なんです」美幸は抗ガン剤を使っていて、副作用で髪の毛が抜けてしまい短くしていたのでかつらをつけた写真で応募した。審査の途中で落選すると思っていた。まさか自分がノーメイククイーンに選ばれるとは思ってもいなかったので、軽い気持ちで参加してしまったことを話した。

 「少々お待ちください」社長は審査員を集め審査をやり直すことになり、表彰は一時中断した。再審査は美幸の短い髪での採点となったが、筆記試験と面接の点数がずば抜けてよかったため容姿の減点があっても審査結果はやはり1位となった。

 「再審査をしましたが、ノーメイククイーンは高野美幸さんです」社長は再審査の採点内容を会場に説明した。

 「再びおめでとう」審査委員長の山下静夫が美幸にトロフィーを渡そうとしたその時だった。会場にいた美幸の父親の高野直樹が待ったをかけた。

 「まさか1位になるとは思わなかったので、美幸から相談を受けた時軽い気持ちで賛成してしまった。これまで正直に生きていくようにと教育してきた。たとえ短い髪で1位となったとしても最初から審査員を偽って参加したのでノーメイククイーンに選ばれる資格がないから辞退させて欲しい」真剣に訴えた。

 「美幸さんはどうなの」社長が美幸の意思を確認した。

 「お父さんの言うとおりです」直樹と同じように美幸は辞退を希望した。

 「大変恐れ入ります。もうしばらくお待ちください」またまた会場は紛糾し社長は審査員を集め再度審査をやり直すことになり、表彰式は中断した。その結果準ノーメイククイーンがノーメイククイーンに選ばれ、3位の女性が準ノーメイククイーンに選ばれた。そして商品も賞金もないが、美幸は特別賞を受けることになった。審査委員長をはじめ審査員全員の願いもあり直樹も美幸も説得され受賞した。

 コンテストは評判になり、次の日から“次回は何時開催か”や“関西でも開催して欲しい”などの質問や要望がメールやFAXや電話で多く寄せられた。その中で“どうして30歳までなのか。40歳でも60歳でも出場したい人はいる”この意見に関心を持った社長は、次回からは18歳から30歳の部と30歳から50歳の部と50歳以上の部の3つの部門に分けて開催することにした。

 それから3ヶ月後の2001年2月18日美幸の病状は悪化し緊急入院することになった。心配した社長はドクターシェフに相談した。社長はドクターシェフから病院へは行けない理由を聞いていたので、パン屋を営んでいる美幸の家に連れて行き両親の相談に乗った。検査データを見たドクターシェフは厳しい状況で病院の言うように余命あと1ヶ月と思った。これまで抗がん剤などの薬剤を多く使用しており、美幸の体力は限界に近づいていた。

 「これ以上薬剤は使わない方がいいのですが、かといって使わない訳にもいかないでしょうね。それに・・・」ドクターシェフは重要なことを秘めていたが言えなかった。

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