18、正雄と美里の結婚式
正雄と美里の結婚が11月末に決まり、何時結婚式をするかでもめ始めた。杉浦家の親戚も高野家の親戚も商売人が多く12月はかきいれ時で31日の大晦日まで忙しいのだ。みんなが集まれるのは元日しかなかった。
止むを得ず2002年元日に日取りが決まった。おめでたいことが2つ重なってよいではないか、と一件落着した。
結婚式の後の披露宴も終わりかけていた。
「美里さんのお父様からお年玉が届いています」司会を務めている社長からお年玉にしては大きな袋が美里の前に差し出された。
「今さら何でお年玉なんかもらわなきゃいけないのよ。子供の頃はくれなかったのに。こんなものいらない」美里は怒り出し、和やかだった結婚式のムードは一変して気まずい雰囲気になってしまった。
直樹は何も言わず退席してしまった。見かねた正雄はお年玉の袋の中身を全部取り出し、添えてあった手紙を読み始めた。
“美里へ。美里は、子供の頃は面倒見が良くていい子だったけど、美幸が病気になってからはわがままになって、言うこと聞かなくなってしまったね。それもこれも、おとうさんが悪かったんだ。美幸が病気だからとか、おまえはお姉ちゃんだから、と何でも我慢させてしまったね。お年玉を美里にはあげなかったけど、大人になったらいつか渡そうと思ってとっておいたんだよ。12年分のお年玉だけど、受け取ってくれるかな。来年は、孫にお年玉をあげたいね。”
美里と両親とのわだかまりは、これで完全になくなった。麦わら帽子は4人のきずなで繁盛していった。