10、美幸の手紙
1ヶ月後美幸は危篤状態になった。美里と両親そして親戚の人たちが病院に駆けつけた。
「美幸、美幸死んじゃだめだよ。美幸が天国に行っちゃたら、美幸1人じゃあ寂しいだろうから私もすぐに行ってあげるね」美里は本気だった。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんは死んじゃだめだよ、死なないで」意識が遠のきそうになった美幸だが必死で訴えた。
「私のせいで、私のせいで、」涙ながらに謝る美里だった。
「お姉ちゃん私を抱き締めて」これが美幸の最後の言葉だった。美里と直樹と優子は美幸を抱きしめた。
「美幸、美幸、美幸」みんなが叫んだ。もう、美幸には何も聞こえなかった。みんなに抱かれて美幸は遠い世界へ旅立った。
享年19歳だった。悲嘆にくれた美里は自分が美幸を死なせてしまったと思い込み、自殺を考えるようになる。
美里が自分のアパートで自殺をしようとするその時、ドクターシェフと社長がやってきた。そして、美幸から社長が預かっていた箱を美里に渡した。箱の中には美幸が小学校3年の時からもらっていたお年玉が全部入っていた。その上には手紙が添えてあった。
“美里お姉ちゃんへ。私が病気になってから、私はお年玉をもらえたけど、お姉ちゃんはいつももらえなかったね。私は長く生きられないと分かっていたから、私が死んだらこのお年玉はお姉ちゃんに使ってもらおうと思って取っておいたの。私のせいでお姉ちゃんに辛い思いをさせてごめんね。ゆるしてね。それから、お父さんとお母さんを助けてあげてね。お姉ちゃんのせいで私が死んじゃったんじゃないのよ。どんなにつらい事があっても絶対に死なないでね。お姉ちゃんまで死んじゃったら、お父さんもお母さんも悲しんじゃうよ。お姉ちゃん、死なないでね、死なないで、生きててね、生きて、生きて、生き ”
美幸の書いた字は弱々しく最後は、“生き”で終わってしまい“て”が書けなかった。手紙を読んだ美里は自殺を思いとどまった。
「辛い思いをさせてゆるして。なんて。私の方がよっぽど美幸に辛い思いをさせて苦しめていたのに。わかった、死なない、絶対に死なないよ美幸」