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死んだというより殺された。

「好きです!!付き合ってください!!」


生まれて初めての告白。

中学3年の3月。

卒業式を前に覚悟を決めて3年間片思いしていた同級生のあやちゃんに思いの丈をぶつけた。


返事がない。

やっぱダメだったのかな・・・

恐る恐る顔をあげてあやちゃんの顔を見る。

下を向いていて表情が見えない。

肩がプルプル震えている。


「あの・・・」


あやちゃんがゆっくりと顔をあげる。

その顔は真っ赤だが表情はどこかうれしそうに笑っている。


「本当に私でいいの?」


今なんて言った?

私でいいの?

いいに決まってます。

じゃなくて、あやちゃんじゃないとダメなんです。


「もちろん!付き合ってください!お願いします!」


勢いで再び頭を下げ、右手を突き出す。

柔らかい手に握られ、


「はい。よろしくお願いします。」






自分は今、世界一幸せだろう。

なんたって、クラスで一番かわいいあやちゃんが自分の彼女として隣を歩いてる。

初めての彼女との下校。

ああ、手ってどのタイミングで繋げばいいんだろう。


「でもシン君、どうせならもっと早く言ってくれたらよかったのに。私たちもう卒業だよ?」


あやちゃんが下から覗くように話しかけてくる。

かわいい。


「いや、、、ずっと言いたかったんだけどタイミングが難しくて・・・」


「ふふふ、まあそうだよね。高校別々だけどがんばろうね!」


「もちろん!」


卒業前に勇気を出してよかった。

あー初デートはどこに行こうかな。

映画、遊園地。。。あー早くダチに自慢したい。


「あ、危ないよ!」


腕を掴まれ引っ張られる。

勢いであやちゃんの体にぶつかってしまう。


(や、、、柔らかい。それにいい匂いがする。)


「大丈夫?」


すると、すぐ後ろをバイクが通過する。

細い路地を猛スピードでバイクが駆ける。


「うわ、危ないな。スピード出し過ぎだよ。ありがとう、あやちゃん。」


今日はどうやらあやちゃんへの告白で運をすべて使ってしまったのだろうか。

朝もマンションのベランダから植木が落ちたり、駅のホームで人に押されてホームに落ちそうになったりあぶない一日だ。

でも、そんなことも彼女ができたことに比べたら些細なことだ。

この幸せは誰にも壊せない。壊させない。


「もう、気を付けてよね。いきなり入院なんかしたってお見舞い行ってあげないからね。高校にも行けなくなっちゃうよ?」


「ははは、気を付けます。あ、もう駅に着いちゃったね。残念だなー帰る方向が一緒だったらもう少し一緒にいれたのに。」


あやちゃんと自分の自宅は反対路線にある。一緒に下校できるのは学校から駅までの短い時間だけだ。


「ふふ、また明日学校でね。」


あやちゃんと手を振り別れる。

電車を待っていると反対側のホームからあやちゃんがまた手を振っている。

しばらくすると、あやちゃん側に電車が到着した。

電車の窓からあやちゃんが笑いかけてくれる。

幸せだ。

ん?

あやちゃんがなにか慌てて自分のほうを指さしている。

後ろを振り返ろうとすると強く誰かに押された。

そのままホームから線路へと転げ落ちる。

体を強く打ち、痛みで体が起き上がらない。

重い体を仰向けにしてホームへと目を向ける。


「いってーなんだよ。」


ホームを見ると女がいた。

不思議な女だった。

そこにいるのに顔が見えない。

髪に隠れているわけでもない。

不気味な女。


女に気を取られ気が付くのが遅れてしまった。

電車がすぐ目の前まで迫っていた。


(え?)


逃げられないことは瞬時に理解できた。

痛みで体が動かない。

あやちゃんのほうに目を向けると最後に目が合う。

あやちゃんの泣きそうな顔が見えた。


こうして俺、シン ナガノは死んだ。




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