第95話 貯蔵庫決戦①
「ンマジマ・ゴ・バヂゴの指輪天昆虫装着。天地望逆邦宝星前屈前屈み解放――!」
俺はさっそうとテキストに書かれていた用語を暗唱する。数時間前に民芸品売り場で読んだ取り扱い説明書によると定められた用語を言わないと発動しないそうだ。
「お、お前何を言ってるんだ?」
弟ニコライズの武装した手下がそんな疑問を俺に対して投げ掛けてくる。
「用語だよ。さぁ、くらえ。ンマジマ・ゴ・バヂゴ――!」
その瞬間、指輪が砕け散り、大きなカマキリのような生き物であるンマジマ・ゴ・バヂゴが姿を現した。
「な、なに!!」
たじろぐ敵達。その目は恐怖に震えている。その刹那、ンマジマ・ゴ・バヂゴは大声をあげながら猛突撃していった。
***
その出来事はあっという間の出来事だった。
弟ニコライズの手下は散り散りになって逃げ出し、効力の消えたンマジマ・ゴ・バヂゴと共に貯蔵庫から姿を消していた。
「ふふ……。この土壇場で魔槍騨昆虫ンマジマ・ゴ・バヂゴを召喚するなんてね。とことんさすがだよ、君は。まさか民芸品売り場でンマジマ・ゴ・バヂゴの指輪を手にいれるほどの鋭い慧眼をもっていたなんてね」
「ど、どこだ弟ニコライズ。出てこい!」
何かの術を使っているのか奴の姿が見えない。俺は闇雲に大声で叫んでみる。
「君に僕は倒せない。大・ベジケント級傭兵魔界ニンジャであるこの僕に指一本触れることもできない」
どこにそんな自信があるのか弟ニコライズは余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》のようだ。あと、大・ベジケント級の意味がイマイチよくわからない。
――シュ……。
その瞬間、周りの空気が震え、足の膝小僧に激痛が走る。
「うっ――!」
痛みに堪えきれなくなった俺は両手を地面につけるような形で崩れ落ちた。
「命中だね。君に当たった矢にはしびれ薬を塗っててね。当分の間君は動けないよ」
「な、なに――!?」
間隙の合間をついた攻撃に俺は戦慄を覚える。隠れ蓑の術を使用している弟ニコライズを前にして俺は窮地に陥った。




