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第94話 お互いを見つめて

「ま、待て――!」

 弟ニコライズの不意の攻撃宣言に対して俺は待ったをかける。とりあえず奴の戦意を削がなければ。


「フッ……。最後に遺す言葉でも思いついたのかい?」


「いや、違う。ここで争いを始めた場合、お前も只では済まないぞ」


「そんなこと知ってる。もちろん周りの状況も。ここで事を起こすつもりは端からないさ。場所を変えようか――。ここはあくまでも君と逢う場所にすぎない」

 吹き矢を華麗に納めた後、弟ニコライズは俺に対してそう言った。


 ***


 通りの賑わいをまるで感じさせない謎の倉庫群。弟ニコライズはこの場所に俺を案内してきた。


「ここは昔、ラ・ハルヤパス大バザール管理組合所有の穀物貯蔵庫として利用されててね。今は見ての通り荒れ果ててるけど。でも、だからこそ交渉にはちょうど良い」


「交渉――。何のことだ?」


「僕が盗んだ。いや、『拝借』した四冊の本はここで返そう。ただし条件がある」


「条件……。なんだ?」


「仲間になれ」


「なに――!?」

 突然の状況の変化に身を乱しそうになりながらも俺はそう言った。いったい奴の真意はどこにあるのだろうか。


「君のような優秀な人材を僕達は欲している。幸い、ロバート殿と君は旧知の中。もちろん今の農場での待遇以上のものをここで約束することもできる」


「いったい何が望みだ!?」


「望みか――。僕はあまりそういうことを考えたことはないな。もし君が我らのグループに入るならロバート殿は君をサブリーダーにするとも言ってたよ」


「お前ら勇者迎合派は何をしようとしているのだ?」


「君、ちょっと質問が多いよ。さぁ、答えて。仲間になるのか、それともならないのか……?」

 弟ニコライズは話はここまでと言わんばかりに俺に対してそう言ってきた。


「もし仲間にならないと言ったら?」


「命の保証はできない」


「そうか。なら……。断る。なんであれ、俺はお前らの企みに参加する気はない!!」


「じゃあ交渉決裂だね。残念だよ」

 弟ニコライズがそう言い放った途端、奥から武装した奴等が十人ほど躍り出てきた。

 そして、俺は奴等に囲まれた。


「命乞いをする時間をあげようか?」


「いや、いらない。かかってきな!」

 俺は暗黒歩兵専用短剣を専用ホルスターから抜き放ちそう言い放った。奴等はまだ知らない。俺の胸ポケットにンマヂバ・ゴ・バヂゴーの指輪があることに――。


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