第93話 対峙する場所はナミール・ホッザラ橋
人波をかき分けてナミール・ホッザラ橋へと向かう。犯人の顔が脳内転送された状態なので見失うこともない。しかし、この犯人の顔はなんだか見覚えがある。誰かに似ているような――。
***
橋の上は行き交う人々でいっぱいだ。その中を俺はトミコさんがテレパシーのようなもので送ってくれているイメージを頼りにしながら前へ前へと進んでいる。途中で別れたヘプポーさんと合流する前にこの事案を解決しよう。そう心に決めた俺は腰にぶら下げている短剣の柄を密かに握り締めた。
「見つけた――!」
犯人は橋の真ん中で川を眺めている。だからずっと動きがなかったのだろう。ここで俺は警戒体制に入った。
「こんにちは……」
まずは俺から話し掛けてみる。こう言うときはまずは挨拶から入るのが基本だろう。相手の動きにすぐに対応できるように俺は少し間合いをとって奴と対峙した。
「待ってたよ。ユキオス君」
「えっ――!?」
なぜこの男は俺の名前を知ってるのだろうか。この瞬間、全ての思考がその答えを求めて頭の中を駆け巡る。しかし、答えはすぐには出なかった。
「ど、どうして俺の名を!?」
「僕の顔に見覚えはないかい?」
そう言った後、奴は目深に被った帽子を脱いだ。その瞬間、戦慄がはしる。こいつは町衣紋さんが一度倒したはずの男だ。
「ま、まさかお前は――。ニコライズ・巡防司・頼勝か!?」
「いや、違う。その弟のニコライズ・望津芳胤・勇勝だ!」
「ななな、なに!!」
予想の斜め上をいく回答に驚愕する。まさかニコライズ・巡防司・頼勝に弟がいたなんて……。
「あいにく兄は今、同窓会に行っててね。そこで僕の出番な訳さ。さぁ、次の問題。どうして僕がここから動かなかったんだと思う?」
「どうしてって……。まさか!?」
「そう。君をおびき寄せるためさ!」
その瞬間、弟ニコライズは近距離滑空型吹き矢ベジゴズフライゴスゼスゴスKを俺に向けてきた。




