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第92話 トミコさんに会いました

「ここか……!」

 目の前には古い平屋の建物がある。一応、看板には『占いのトミコ』と凄まじい達筆で書かれてはいるのだが、本当にここで正解なのかと疑いをもつような雰囲気だ。


「こんにちはー!」

 なんとかコンタクトを取ろうとまずは大声で叫んでみる。

 しかし、応答はない。

 次にドアノブを回して様子を伺う。

 しかし、鍵が掛かっている。


「ニッキーさんの紹介で来ました。直筆の紹介状も盛ってます!」

 そう言った時だった。


 ――ガチャ。

 不意に施錠されていた鍵が開き、中から生命の営みの強さを感じさせるような強い瞳を輝かせたおばあちゃんが出てきた。


 ***


「何のようだい。私にコンタクトを取るとは良い度胸だよ」


「突然の訪問をお許しください。ミス・アレグゼンダーゼ・フォン・トミコ。あなたの高い御見識と占いパワーをぜひお貸し願いたいのです」


「勿体振るような言い回しは止めな。私はね、あんたの三倍はこの世界で生きている。言いたい事があるなら率直に言いな。逆にそっちの方がありがたいよ。それが年長者に対するマナーってもんだよ!」


「も、申し訳ありません。私の粗相をお許しください」

 こういうときは相手を刺激しないようにする。そして、相手に優越感を錯覚させることで交渉の糸口を掴むのが理論セオリーだ。


「わ、わかったらいいんだよ。入りなよ。お、お茶でも飲むかい――。お菓子もたくさんあるよ?」


「ありがとうございます。いただきましょう」

 少々ツンデレなトミコさんに好感を抱きつつも俺は室内へと入った。


 ***


 室内には至るところに用途不明の道具が散乱している。恐らく占いの時に使う物なのだろう。そうこうしている内にトミコさんは席に着いた。


「これよりメルボージシ・ウッコシの秘術を応用した特務仕様の占いを行う。まず意識を集中し探している物をイメージしな。お前のイメージをメルボージシ・ウッコシの力を借りて表層心理に写し混むぞ!」


「……。まるでよく分かりませんがお願いします」

 こうして占いのような秘術のような何かが始まった。


 ***


「見えるぞ!」

 二十分の沈黙の後、トミコさんが叫び声を上げた。きっと何かが見えたのだろう。


「これよりメルラザ・ゴ・ゾバノの力を使いお前にこの脳内イメージを転送する。慎んで受け取りな!」


「あれ、さっき言ってたのと違うような……」


「そんなのはなんでもいいのさ、適当だよ。肝心なのは気持ちさ。さぁ、くらいな!」

 

「う……。ぐっ!」

 す、凄まじいエネルギーだ。まるで人類のこれまでの歩みを詰め込んだような、そんな感覚だ。み、見えるぞ。大切な書物を強奪した人物の顔と居場所が。


「トミコさん見えました。奴はナミール・ホッザラ橋にいます――」


「行きな、若造。お前にこのイメージを転送したままにしてやる。私のこの気持ちを大切にな!」


「……。はい!」

 そして俺は走り出した。いよいよ対決だ。


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