第91話 なくなりました②
「――。お前の話はわかった。じゃあそいつに俺の大切なアニキはやられたんだな?」
「えぇ恐らく。それと大切な書物を四冊盗まれたみたいです」
「ボギャニフニダフ――。ベルガジソニブル戦記要覧を盗まれてしもうた!!」
その時、店の奥からニッキーさんが大声でそう言いながら出てきた。
「な、なんだと――。あれは魔王軍統合参謀本部戦史研究所に納めなければならんのに……。それで犯人の特徴は!?」
「吹き矢を腰にぶら下げてた傭兵じゃ。それもかなりの手練れじゃ」
「アニキ、手掛かりが少なすぎるぜ。ここはトミコさんに協力を要請したらどうだ?」
「おぉ、それがいい。ボギャニフニダフよ、ナイスアイデアじゃ!」
「ちょ、ちょっと待ってください――。トミコさんって誰ですか?」
イマイチ話についていけてない俺はここで胸に湧いた質問をぶつけてみた。
「アレグゼンダーゼ・フォン・トミコさんは今年で齢九十八歳になる女性じゃ。この町の施政方針を決定する長老衆会の名誉顧問でもあり凄腕の占い師の側面も併せ持つ伝説じゃ!」
「と、とりあえず凄い占い師なんですね。わかりました。二人はここに居てください。俺が行って聞いてきます」
「トミコさんは占い対象者の深層心理の向こう側の意識とシンクロし探し求めている言葉を有機星憑依体連丹恒にしてそれを教えてくれる。おぉ、少し待っとけ。今から紹介状を書いてやる。トミコさんは極度の恥ずかしがりやさんでな。紹介状がないと取り合ってもらえんからな」
まるでよくわからない情報を俺に伝えた後、ニッキーさんは奥へ入っていった。
***
「ほれ、これが紹介状じゃ。トミコさんの占い事務所の場所はこの地図に印をつけておる。急いで向かえ。トミコさんはもうすぐ昼寝の時間に入る。この機会を逃すと次のチャンスはないと心しとけ!」
「はぁ……。わかりました」
なぜかいきなり強気になったニッキーさんに不信を抱きつつも俺は駆け足で走り出した。




