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第90話 なくなりました

「ユキオス、君の言う通りじゃ。貴重な書物を保管している金庫が開けられておる」

 ニッキーさんはうつむき加減の表情でそう言う。どうやら事務所内にある金庫が荒らされていたらしい。


「ということはまさか……」


「うむ、君の想像通り外伝オグロ・バンニフニャフタスを含めたS級書物が四冊ほど無くなっておる」


「はぁ……。やっぱりそうですか」

 肩をガックリと落とした後、俺はそう答えた。

 その時だ。

 ――カチャーン……。

 入口の方で扉を開ける音が微かに聴こえた。もしかしたら犯人が何かしらの事情で現場に戻ってきたという可能性も大いに考えられる。


「ニッキーさんはここにいて下さい。ちょっと表を見てきます」


「うむ、気をつけてな」

 ニッキーさんは注意深げな表情をしながら一言そう言った。


 ***


 入口に近づく度に凄まじい緊張感に襲われる。侵入者が何らかの理由で舞い戻った可能性もある。こんな時に備えて暗黒歩兵専用短剣を装備しといて本当に良かった。やはり最近の自衛装備は短剣に限る。取り回しも容易で狭い空間でも使いやすい。それに先日、隊長と受講した農場近接防衛術初級講習によって俺の戦闘力はかなり上がっている。だからどんな奴がやって来ても正直自信はあった。


 ***


「おーい、アニキ。アニキはいないのか――!」

 入り口から大声が聞こえる。どうやら敵ではないようだ。その声を聞いた途端、俺は短剣を専用ホルスターにしまった。


「アニキーはどこだぁ。帰ったぞ――!」

 凄まじい声のボリュームである。まるで天地がひっくり返ったようだ。その目と声が俺を捉えた。


「おめぇは誰だ。アニキじゃねぇな?」


「あっこんにちはー。俺はユキオスと言います」

 ここはまずはラフな感じで応対してみる。


「あぁ、ユキオスだぁ。俺はニッキーの弟のボギャニフニダフだ。アニキはどこ行ったぁ?」


「お兄様はですねぇ……。ちょっと怪我をしたみたいでして。詳しく話しますと――」

 ボギャニフニダフさんは動揺を隠せていない。これは巧みかつ軽快なトーク術を駆使して応対する必要がありそうだ。


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