第89話 着きました②
「やっと着いた。ここか……」
その時、俺は感動のあまりつい声に出して言ってしまった。ようやく着いた。古書店ニッキー&ボギャニフニダフブラザーズに。見たところそんな高価な書物が眠っている感じはない。むしろ第一印象は親しみやすい町の本屋さんといったところだ。
ガチャ――。
ゆっくりとドアノブを回して俺は店内へと入る。中はとても薄暗く静かだ。そしてお客さんも誰もいない。
「こんちはー。誰かいませんか?」
「……」
応答はない。いったいどうしたと言うのだろうか。
その時、店の奥で微かに物音がした。俺は意を決して店の奥深くへ入ることにした。
***
「それにしてもこの店、奥が深いな――」
入り口からは予想できないくらいに書店内は広い。埃を被った棚にはびっしりと本が敷き詰められている。これ全部が売り物なのだろうか。
「ウッッ……」
その時、微かな物音がうめき声へと変わる。どうやら奥で誰かが倒れているようだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「ウッッ……」
見たところ怪我をしているようだ。足に傷をおっている。
「と、とりあえず応急処置をしましょう」
そして俺はリュックから魔界包帯を取り出した。この包帯は三日前にみんなで参加した農場怪我人発見時応急処置実践教習を受けた時に遠方からやって来た看護教官の元木活磨乃助・ライアス・准吾さんから直々に戴いたものである。なんでも出血を最大限抑える力があるらしいが――。
「うぐ……。き、君は誰だ?」
「魔界大根農場幹部スタッフ兼暗黒歩兵のユキオスです」
「おぉ、君がゴルヌス隊長の使いの者か。ワシは本谷谷川ニッキーと申す。油断していたところを黒装束を纏った男に襲われての。気がつくとこのざまじゃ。まったく油断したワイな」
「あなたがニッキーさんですか。一応、出血は包帯の力で止まりました。どこか他に痛いところはありませんか?」
「うぅ……。君の優しさが身に染みるまるで食パンに染み渡るバターのようじゃ」
「はぁ……。そうですか。ところでニッキーさんを襲った相手に見覚えはありませんでしたか?」
「うむ、あの身のこなしは只者ではない。恐らく傭兵じゃ。そう言えばデカくて長い吹き矢を腰にぶら下げておったの」
「吹き矢――。ですか」
傭兵、デカくて長い吹き矢。これだけでは情報が少なすぎる。もっと何か手がかりは無いのだろうか。
「ところでニッキーさん。何か盗まれた物はありませんか。そいつは物取りという可能性が高いです」
「何か盗まれる……。まさか!?」
その時ニッキーさんは何か心当たりがあるような表情を浮かべた後、書店の奥へと痛む足を気にしながら向かって行った。
まさか……。その時、俺の脳裏にある予想が浮かび上がってきた。




