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第7話 歩む道の彼方に微笑む者

 魔界大根。

 俺の働く農場の主力作物であるこの大根はとてもジューシーかつ心が奪われそうなおいしさを兼ね備えている。


「あなたのとこの大根を楽しみにしてるのよ」


 その一声ひとこえを聞くために俺達農場作業員は毎日、一生懸命働いている。

 この魔界大根であるが、収穫後に等級別に選別をして出荷作業に入っている。もし横流しが行われているのであればこの出荷作業の時だろう。

 地獄大根を心待ちにしている者達の元へ地獄大根が届かない。これはとても由々しき事態である!勇者様御一行がこの辺りに来る前になんとしてもこの事件の真相を突き止めないといけない。そんなことをいろいろと考えながら、俺とロバートさんは農場へと急いだ。


 ***


「なぁユキオス。お前夢ってあるか?」

 農場へと帰る道中、突然ロバートさんがそんなことを聞いてきた。


「えっ……。夢ですか?もちろん俺の夢は憧れの暗黒騎士になることです!」

 俺は張り切ってロバートさんにそう言った。この世界に来るまで夢に描くだけだった暗黒騎士。それが現実のものになるかもしれないのだ。間違いない!

「それでいいのか?お前?」


「えっ!?ど、どういうことですか?」


「夢というのは大きくもたないといけない。暗黒騎士?それでいいのかお前?それで世界を変えれるのか?」

 ダメだ。ロバートさんがまたおかしなことをいいだした。この人はいつもそうだ。時々、熱い言葉を言いたくなるのか俺に対してさっきのような問いかけをしてくる。


「いやいや、ロバートさん。暗黒騎士もかなり難しい職業ですよ?現に俺は今クラスチェンジ前の暗黒歩兵ですし」


「ふっ…。お前暗黒騎士だけが上級クラスだと思ってたら大間違いだぜ?」


「えっ!?まさか他にも進む道があるのですか?」


「そうだ。お前俺と一緒に農業騎士アグリカルチャーナイトを目指さないか?」

 ロバートさんは一呼吸おいた後、俺に対してそんな提案をしてきた。農業騎士?初めて聞いたネーミングだ。何をする職業なのだろうか。


「ロバートさんそれ何をする職業ランクなのですか?農業と騎士ってまったく合わないような…」


「ふっ…。実はお前の近くにその職業ランクになった者がいるぜ?」


「えっ!?俺の近くに?まさかそれはロバートさんなのですか?」


「いや、残念だが違うぜ。実は隊長は農業騎士アグリカルチャーナイトなんだぜ!」


「へぇ…。隊長が農業騎士なんですか。まぁ、想定内ですよ」


「えっ!?想定内なのかよ!もっと驚けよ」


「いや、だって俺農業騎士に興味ないですから!俺の目標はあくまで暗黒騎士なんですから!」


 道は続くさどこまでも。


 人の言葉に左右されたくない。


 そう、夢はひとつ暗黒騎士なのだ。

 今は農場で働いているが……。

「俺、ファイト!」

 心の中でそう叫んだ春先の小路こみちなのであった。


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