第87話 ちょいと休憩
「おい、ユキオス悪いがちょっと休憩だ。腹が痛くなってきた」
「えっ――!?」
農場を出発してから早一時間。どうやらこの一時間でヘプポーさんはお腹が痛くなったらしい。
「手綱を握ると時々、プレッシャーで俺は腹が痛くなるのさ。それだけ馬車ドライバーの仕事は緊張の連続なのさ」
「はぁ……。そうですか」
「よし、次の交差点で左折してウィンカーを出した後、喫茶『ベン&勉巴三四郎《べんともさぶしろう』に寄るぜ。すまねぇな」
「えっ――。この馬車ウィンカーが付いてるのですか?」
「あっ当たり前だ。魔界道路規則にもしっかり明記されているぜ。交通ルールはきっちりと守らないとな!」
そして五分後、俺達は古ぼけた一軒の喫茶店に入った。
***
「おぅ、ヘプポーさんじゃねぇか。どうした、この野郎?」
「ふっ――。相変わらず基本的に喧嘩腰だなベンさんは。そう言えば勉巴三四郎さんの顔が見えないが」
「勉巴三四郎は今、親子参観日に行ってる」
「おぉ、息子のペランゴ・巴吉一思郎君はもう小学生か。月日というのは本当に早いな。おぉ、そうだ。話が長くなった。ベンさんよ、トイレを使わしてくれ」
「その角を曲がった後見えてくる倉庫の裏手にある。トイレットペーパーはセルフサービスだ。自分のを使いな!」
「もちろんだ。だからこそ俺は今ここにいる。それが大人と言うものだ」
そく言い残した後、サプポーさんはトイレへと向かった。
***
ヘプポーさんを待つ間、手持ち無沙汰になった俺は喫茶店内に飾られてある写真や風景画を眺めていた。どれもレベルが高い代物ばかりで店主の心意気とものを見る目の高さが強く胸に伝わってくる。その時、一枚の写真に俺の目が釘付けになった。
「ベンさん、この写真に写ってる人って……」
「お前、よく気がついたな。そうだ。さっきトイレに駆け込んだヘプポーだ。彼は馬車の運転手をする前は魔王軍西部方面第一野戦軍独立機動火砲中隊の隊長をしていてな。現役時代の活躍はそれはもうすごかったぞ。勇者率いるパパポルマコズ共和国軍と一戦を交えたダゴバザグズ峠機動迂回作戦では――」
ベンさんは一度話し出したら止まらない。
そして、肝心のヘプポーさんは結局二十分ほどトイレに入っていた。




