第84話 情報共有と町衣紋さんの寂しさ
古書室で有意義な時間を過ごした後、俺は自室へと向かった。
謎が謎を呼ぶパルメクル。そして、ロバートさん達の行方……。またまだ調べたりないのだが、今日はこのくらいにしておこう。
「ユキオスどうだ。進展はあったか?」
風呂上がりの町衣紋さんが俺に話しかけてきた。
「町衣紋さんのアドバイス通りでした。アルヤゴ山に『何か』があります」
「やっぱりか……。俺の読みは当たったな」
「でも、どうしてアルヤゴ山って分かったんですか?」
「あぁ、俺の父さんが昔、パルメクルにある大使館で駐在武官として勤務していたことがあってな。まだ小さかった俺も数年間パルメクルで住んでたんだ」
「そうだったんですか……」
さすが町衣紋さん。深読みが鋭い。まるで尖りに尖った木の枝のようだ。
「ここは実際に現地調査をしたいところだが……。しかし、滞在許可はまず出ない。だからといってあの国に非正規ルートで潜入するのもかなり難しい。数年前、専門学校で一緒だった友達のジルクモート・アハルゲアモート・良男が秘密潜入を行ったことがあるんだが、彼は戻ってこなかった……」
「えっ――。じゃあジルクモート・アハルゲアモート・良男さんは……?」
「運が良ければあの国の収容所に入れられているだろうな」
「――!?」
町衣紋さんのその一言を聞いただけでパルメクルの恐ろしさがよくわかる。でも、なんとか潜入して飛翔筒開発の進捗状況やロバートさん達の企みを暴かないと……。
「とりあえず今は俺達単独で動くことはできない。パトリキオスからの連絡を待つしかない。ユキオス、美味しい大根を作ることだけをただただ真剣に考えるんだ」
「そうですね、魔界大根品評会が目前に迫っている今はそれしかないですね」
「あと、申し訳ないが俺は暫く農場を留守にする」
「えっ――!?」
町衣紋さんからの予想外の言葉を聞いて俺は驚く。
「二日後、エランゴララバヤで専門学校の同窓会があるのだ。それに参加しないといけない」
「エランゴララバヤですか。それは遠いですね。でも、同窓会から仕方がないですね。わかりました」
「俺が農場を留守にしている間、頼むぞユキオス」
そう言った町衣紋さんの表情はどこか寂しげであった。




