第80話 しばしの別れ。そしていざ農場へ
次の朝、ドラガゼス元首やパトリキオス。そして、満遠会長に別れの挨拶をした後、俺と町衣紋さんは農場へ向かった。俺達がドミルセーエフ市にいたのはたった数日のことであったが、なんだか一ヶ月くらいこの町にいたような気がする。それほどまでに濃いめの日々だった。
そして、俺達が農場に向けて歩みを進めた時だった。
「ユキオスさ――ん。待ってください!」
誰だろうと思い振り返るとそこにはパトリキオスさんがいた。
「さっきの繰り返しになりますがユキオスさん、それに町衣紋大尉。本当にありがとうございました。それとこれは細やかなものですが私からの感謝の印です」
そう言いながらパトリキオスさんは何かの種が入った袋を俺に差し出す。
「これは……。なんですか?」
「パットプラコーソベルジロージルライラゴゴ大根の種です。ぜひユキオスさんの農場で育ててみてください」
「パットプラコーソ……。すいません、その部分しか覚えていません。どんな大根なんですか?」
「これはラッゴテッマクルイドッコイタンドリーサマゴ・フルスタゴスジスゴー族との交易を通じて手に入れた幻の大根の種です。実はこれ私の宝物なんですが、友情の印としてプレゼントしますね!」
「はぁ……。まぁ、ありがとうございます。大切に農場で育てます」
いきなりフレンドリーになったパトリキオスさんの心境の変化に戸惑いながらも俺はその種を受け取った。
「ユキオスさん。もしロバート一派の行方及び目的が判明しましたらすぐに農場に伝令を送ります。もちろんあなた方の立場も承知しています。でも……。その時はご助力よろしくお願いします」
「いえ、そんな――。もちろん隊長に諮らねばならない案件ですが俺達は必ず応援に駆け付けます」
「ありがとうございます。とても期待しています」
そう言った後ふと見せたパトリキオスさんの笑顔がとても印象的だった。




