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第6話 一緒にコーヒーでも飲みませんか?

「えっ!?ロバートさんどうして本陣にいるの?俺はてっきりデーモンにヤられたのかと……」


「おいおいユキオス。勝手に俺を殺すなよ。まったくお前はとんでもないファンキーなやつだな。あの日、俺は隊長の手紙をポストに投函する際、周囲を偵察中のデーモンに襲われた。そして人質として本陣に連れていかれたのだが、そこで会ってしまったのだ。初めてお付き合いをした相手であるフランソワちゃんに」


「えっ!?ロバートさんが初めて付き合ったのってフランソワ上級大佐だったんですか?」


「昔の話だ。とりあえず二人ともしばらく話すな。めんどくさい。それとロバート。私の名前にちゃんをつけるな。上級大佐と呼べ」

 クールなフランソワ上級大佐はそう言って話に入ってきた。それにしても彼女、黒い軍服がよく似合うな。その時、ユキオスはそう思った。


「二人とも聞いてくれ。私は君達に危害を加えるつもりはない。勘違いしているようだが、ロバートよ。いつでも帰ってくれてもいいんだぞ。ここでしばらく魔界コーヒーを飲みたいと言ったのは君だぞ?あとユキオスは嘘をつくな。君はペルニアス大先生の弟子ではないだろう」

 長々とフランソワ上級大佐は俺達に対してそう言った。


「あっ……。バレてました。てへへ……。すいません。話し声聴こえてたんですね。あぁ、それよりも私は今回、司令部から使者としてここに来ました。どうか反乱を止めて所属部隊に復帰してもらえませんか?フランソワちゃんのお父さんも心配してますよ?」


「だから私の名前にちゃんをつけるな。たしかに私は今、魔界年齢では18歳だが、人間年齢に換算すると約125歳になる。それと父が心配?笑わせるな。あの男は心配などしない。金と出世にしか興味がない。それが私の父だ」


「そ、そんなことないですよ。心配してましたよ?娘が思春期で反乱を起こしてるって」


「思春期で反乱?君は何か勘違いをしているぞ。私はその若さゆえに反乱を起こしてるのではない。最近、私が率いるデーモン特殊部隊への食糧配給がどんどん減ってきているのだ。特に私達が大好きな魔界大根が!この不誠実を皆にアピールするために私は数人の同志と共に決起けっきしたのだ!」

 えっ!?魔界大根ってうちの農場で作ってる作物じゃん。

 ユキオスはその時、心の中でそうつぶやいた。でもおかしい。倉庫には出荷待ちの魔界大根がたくさん貯蔵されており、準備が出来たものから連日各地へ出荷している。もしかしてどこかで横流しされているのかも知れない。これは詳しく調べる必要がありそうだ。


「フランソワちゃんそれって気のせいじゃないの?」

 二人のやり取りを見ていたロバートさんがいきなりラフな雰囲気をただよわせながらそう言った。


「ロバート。お前は黙っていてくれ。私は今、ユキオス君と話をしている。お前を地獄に落としてやろうか?」


「ごめんなさい。すいません」

 あれっ!?ロバートさんがやけに素直だ!

 その時、ユキオスは心の中でそう感じた。フランソワ上級大佐は怒らせるとかなり怖い乙女おとめなのだろう。いやいや、話を元に戻そう。とりあえず農場に戻って魔界大根がきちんと出荷されているのかを調べる必要がありそうだ。まずはこの件をフランソワ殿に伝えないと。


「上級大佐殿。実は魔界大根のことなんですがその作物、俺が勤務している農場で大規模に作ってるんですよ。俺が責任をもって調べてみるので反乱を止めてもらってもよろしいでしょうか?」


「そうか。魔界大根は君が働いてる農場で作られているのか。私が所属しているのも西部軍管区だから間違いないだろう。よし!わかった。ユキオス君にこの件の調査を任せる。何かわかったら教えてくれ。私はこの陣地で待っている。結果次第で反乱を止めるのか続けるのかを判断しよう」


「わかりました。では私はいったん農場に帰ります。ロバートさんも行きましょう」


「いや、ユキオス。俺はここに人質として志願する。フランソワ上級大佐もその方が安心だろう」


「いいや、お前は速やかに帰れ。ここで魔界コーヒーばかり飲むな。それけっこう高いんだから。ユキオス!こいつを連れ帰ってくれよ」


「えぇ…。そりゃあないよ…」

 ロバートさんはガックリと肩を落としてそうつぶやいた。


 こうして俺とロバートさんは本陣を後にして、農場へと向かった。戦闘にならなくて良かったと本心から思ったユキオスであった。


 ***


「あれ……?これユキオスさんの忘れ物かな」

 本陣の掃除をしている最中に二等デーモンのムースはイスの下に転がってたパンを見つけた。とても美味しそうなパンだ。見たところメロンパンのようだが……。


 パクっ!

 腹が減っていたムースは一口食べてみた。やはりおいしい!外はサクサク。中はうっとり?だ。なんていうか、うまく口で表現できないような味だ。


 その時だ!


 本陣の外では雷鳴らいめいがとどろき辺りが真っ暗になっていく。不安になったムースは外に出てみた。するとそこには黒き翼をはためかせた超魔神が俺を見ていた。


「フハハハハハ……!我はいにしえの魔界の門からキサマに呼び出された全装虚空審王ぜんそうこくうしんおうバルトバグラチオーネだ!キサマの敵は私の敵だ!さぁ!戦いの輪廻りんねの舞いを始めようぞ!今だ!天を支配する雷鳴よ!我が元に集まれい!」


「えっ!?何?誰ですか?」

 二等デーモンのムースは何がなんだかわからなかった。


 大切な召喚パンを落としてそのパンを2等デーモンのムースに食べられたことをまだ本当の持ち主であるユキオスは知らない。


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