第75話 夜明けと追跡調査
魔人によって引き起こされた異空間火炎状態は満遠会長が唱えた大地空間地場超突撃変更呪文によりその被害は最小限に抑えることができた。魔人がいた場所の壁紙の隅がほんの少し焦げているといった感じだ。しかし、町の秘宝であり元首の存在を象徴する『紫錫司のマント』は残念ながら失ってしまった。もしかしたらロバートさんが召喚した魔人の目的はそこにあったのかもしれない。事実、魔人は紫錫司のマントとともに消えていた。
マントの存在を思いだし会長が懸命に呪文詠唱する商館内に戻ろうとした俺に対して元首は一言こう言った。
「ユキオス。マントの存在より大切なものはたくさんある。ここは会長に任せよう」と。
***
次の朝、暖かな太陽が天に昇るのを待った後、俺達は二手に分かれた。元首とパトリキオス、それに満遠会長は存在感を示すために市議会議場へ。俺と町衣紋と実は元首の私的情報主任幕僚であったコフブは消えた反ドラガゼス派の要人とロバート一派の捜索・調査へ。ちなみにロバートさんの話だと『海に船を待たせている』らしいが……。
「コフブさんどこか目星がついている場所はあるのですか?」
「もしかしたら――。という場所は何ヵ所もあります。その中でもジゴル地区に面している護岸化された海岸地帯がもっとも怪しいかと。あそこが一番洋上に近いですし」
「ここからどのくらいの距離なんですか?」
「だいたい……。一時間くらいでしょうか」
コフブは神妙な顔をしながらそう言った。ロバートさんが姿を消してからもうすでに数時間が経過している。もしかしたらもういないかも知れないが、せめて何か手がかりがあれば。そんな小さな期待を胸に込めて俺達はコフブが手配した馬でジゴル地区へと向かった。
***
市街地を勢い良く抜けた後、俺達はあまり人気のないところへと足を踏み入れた。コフブ曰くここがジゴル地区らしい。
「ここは第三種警備地区に指定された場所です。だから民家はありません」
「それにしては……。兵士がまったくいないような――」
「元首の軍縮政策によって従来いた警備隊員は一気に減らされ今は三人ほどしか駐在していません」
「そうですか……」
警備が手薄な場所ならロバートさんが付け入る隙が大いにありそうだ。俺達はまずは聞き込みのために駐在警備隊員がいる警戒灯台へと向かった。




