第72話 光満ちる可能性の剣
「こ、これは……」
みるみる内に歪んだ極地地場空間が俺の手に集約されていく。暖かい。とても心が落ち着く暖かさだ。
「な、なんだそれは手品かマジックか!?」
ガルシアヌスは動揺を隠せていない。同じ意味のことを二回言っている。反撃に出るなら今かもしれない。
「聴こえるか……。ユキオス……」
「えっ!?」
光が喋ってくる。いや、この声は……。ゴルヌス隊長の声のような……。
「ユキオスよ時間がないから手短に話す。ちなみにこのメッセージは極地空間地場集束エビデンスエネルギーガンマを応用した記録メッセージだ。では始める。これより君の元へ可能性の剣を送る。使え。以上」
ここで微かな声のメッセージは終わった。いや、ダメだ。まるで要領を得ないメッセージだ。全然理解できない。そうこうする内に俺の目の前に出現した光が集まりあるものになった。
「こ、これは――!?」
大根だ。それも大きな。隊長は大根で戦えというのだろうか……。
「ハッハッハッ――。大根で俺と戦うだと……。笑止!!」
そう言いながらガルシアヌスは突撃してきた。それを俺は大根で受け止める。
「な、なんだ……。その大根は!?」
その声に反応するように大根はまた輝き始めた。すさまじい光だ。これはもはや大根を超えた大根だ。そして、俺には見える。大根が銀色に輝く剣に!
「お、お前はまさか……。伝説の農産物応用活用騎士なのか!?」
「さぁ、こいガルシアヌス。ケリをつけよう」
俺は静かにそう言うとそっと大根を構えた。
***
「グッ……。グッ!」
大根剣の重みに耐えられなくなったガルシアヌスが苦しそうな声を上げる。スピードではジェット推進機構を装備したやつに分があるのだが、それにも増して大根剣から満ち溢れる光がやつを圧倒している。
「お、おのれ……」
「これで終わりだガルシアヌス!」
その時、ついに俺の大根剣がやつを捉えた。




