第69話 変化の兆し~ガルシアヌスの視点編~
生き残った部下によると、『その出来事』は一瞬の事だったらしい。
彼の証言はこうだ、『一人の老人が前衛部隊を壊滅させた』と。後方を進んでた俺は詳しい事実関係を把握してない。しかし、『前衛部隊の選抜された二百人隊』が一瞬にして消えたことは事実だ。
「少佐殿、どうされますか。残るは私を含めて十人ほど――」
ニケウス副官が不安そうな表情を浮かべながら俺にそう言う。ほんの少しまで我々の方が有利だったのに。その言葉が脳裏を過る。
「も、問題ない。本部に応援を要請しよう。あぁ、もしかしたら少し前に発進させたアグリスⅥがドラガゼス一派を殲滅させてるかもしれない」
「そ、それが本部なんですが先ほど伝令が到着しましてドラガゼスが生きている可能性がある限りガルシアヌスらの行動には味方できないと……」
「な、なに!?」
本部に見捨てられたということか。トカゲの尻尾切りとはまさにこのことである。
「ロ、ロバート殿はなにしてる。遅れて我々と合流するんじゃなかったのか?」
「先ほど伝令を送ったのですが室内はもぬけの殻でした」
「ロバート殿まで……」
このままではヤバい。一発逆転を狙うにはドラガゼスを倒すしかない。
「ニケウスよ私は特務高度統合火力支援型煌起動総装着アーマーを使うぞ」
「えっ――。しかし、あれはまだ試作段階で装着者に対するダメージが……」
「どのみちこのままでは後がない。装着後、俺は一気呵成に突撃機動強襲態勢に入る。君は武装エリート隊員を率いて俺の後へ続け」
「わかりました。少佐殿のお覚悟とくと拝見させていただきます」
俺はこの『賭け』に勝たねばならない。そう、必ず。やらねばならないのだ。




