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第5話 俺はあくまでも交渉人です!

 小高い丘の上は巧妙に柵が張り巡らされ、フランソワ率いる反乱軍?が本気まじなんだということがとても伝わってくる。でもべつに気にすることではない。俺はあくまでも交渉をするためにここに来たのだ。決して一戦を交えようとなんて思ってはない。俺は心を落ち着かせるために腰に着けた暗黒歩兵専用ソードに手を当てる。使いなれたこのつるぎは俺に対して「頑張れよ。お前はやればできる」と話しかけてきたような気がした。


「すいません!こんにちは!」

 勇気を振り絞り相手の反応を待つ。立派な陣地なのではあるが、外から見た感じたくさんのデーモン達が籠城している雰囲気ではない。たかだかリーダーのフランソワとその友達数人といったとこだろう。それにしても反抗期で反乱を起こしているというのはどういうことなのだ?よっぽど両親と仲が悪いのだろう。でも相手は若いとはいえラストグレードサンダーデーモン。一本間違えばデーモン一族お得意の連続魔法「かみいかづち」で黒焦げにされてしまう。


「よし、ここは誰が出てきても慎重に」

 俺は一言そうつぶやいた。


「誰だ!」

 網目の細かい柵で出来た門が勢いよく開き中から一人のラストグレードサンダーデーモンの男が出てきた。ちなみに彼らの外見は人型ひとがたで一目見た感じでは角が生えた人間だ。もしデカイモンスタータイプのヤツが出てきたらどうしようかとも思ったが、その事はどうやら杞憂きゆうに終わったようだ。


「あっ!私は軍使のユキオスと言います。今日は交渉に来ました。反乱を起こしているフランソワ殿に会いたいのですが?」


「何!?フランソワ上級大佐に会いたいだと?ふぅ……。貴様!司令部からの回し者だな!会いたいならまずは俺を倒してみな!」

 そう言いながら目の前にいるラストグレードサンダーデーモンは戦闘体勢に入った。


 周囲に雷の輪ができる……。


 ヤバい。ヤられる。と言うかフランソワ上級大佐って何?いつから上級大佐になったの?その前に彼女はあの若さで大佐なの?まぁ、そもそも俺はフランソワちゃんを知らないのだけれども。

 いや、待て待て。まずは目の前で戦う気満々のラストグレードサンダーデーモンを何とかしなければ。いろんな考えが脳裏をよぎるがとりあえず現状を何とか克服しないと。ちなみに切り札である召喚パンはまだ使えない。こういう大切なものは最後までとっておかないと。


 その時、俺は良いことを思いついた。


「ま、待ってください!あなた私を知らないんですか?」


「お前のような人間、知らねぇよ。さぁ!早く戦いを始めようぜ!」


「ふぅ…。私の古代魔法、最終幻想自由炎ラストファンタジアフリーダムフレイムをくらいたいのか?デーモンよ!そなた目の前にいる私を誰だと思ってる?俺は実は魔法戦士ユキオス・カールフォン・ペルニアスであるぞ!」

 もちろん全て嘘である。俺、魔法なんて使えない。魔法戦士というより、農業戦士である。しかし、嘘も方便ほうべん。こんなバレバレの嘘を向こうが信じてくれるかは不明だが。


「な、何!?あなたはまさかあのペルニアスの名の継承者けいしょうしゃなのですか?」


「えっ!?あぁ、そうだ。私は継承者だ。たぶんな。きっとな!」


「これは失礼しました。まさか天聖機動獅子王てんせいきどうししおうアポロニア・ペルニアス大先生のお弟子さんですか。そんな方が私達の味方になってくれるとは心強い!ささぁ!本陣に来てフランソワ上級大佐に会ってください!」


 えっ!?誰?ペルニアス大先生って?俺、今適当に言ったんだよ。本当にそんな人実在するの?てか天聖機動獅子王てんせいきどうししおうって何?俺、初耳だよ。いや、たしかにカッコいいネーミングではあるけれども。あぁ、この世界には知らないことが多すぎる。まぁ、いいか。戦わずにすんだし。前向きに前向きに!

 ユキオスは心の中でそう思った。


「わかった。案内よろしく頼むぞ」

 そう返答した後、とりあえず俺はデーモンさんについていった。


 ***


「上級大佐失礼します。二等デーモンのムースです!お客様をお連れしました」


「入れ」

 中から声が聞こえた後、本陣の扉が開く。よし、フランソワちゃんに会ったら自分の正体をあかそう。そして、反乱をやめるように説得しよう。何とかなるさ。切り札の召喚パンもあるし。


 俺はそう心の中で予定を立てた。


 比較的広い本陣内には二人の人影が見える。

 一人は軍服を来た若そうな女性デーモン。彼女が反乱軍?リーダーのフランソワちゃんだろう。

 そして、もう一人は……。

 あれっ!?ロバートさんだ!


「よう!ユキオス!お前は相変わらずファンキーなやつだな!」

 ロバートさんはニヤリと微笑みながら俺に一言そう言った。


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