第66話 崩れゆく計画と決断~ロバートの視点編~
「ロバート、大ニュースだ! ドラガゼスが生きていた。それもラバイトス商会に匿れている!」
ドカドカと警務隊本部庁舎幕僚談話室に入ってくるなりガルシアヌスはそう言った。
「それで君はどうする気だ?」
「どうするって……。もちろん今すぐに部隊を編成して奴を捕らえに行く。敵対する奴等も全員残らずだ。きっと紫錫司のマントもそこにあるはずだ。なんならどさくさに紛れて暗殺するという手もあるぞ!」
「その大義名分は?」
「そんなのは後から考えればいい。大切なのは行動することだ!」
「はぁ……」
その時、俺はついため息が出てしまった。まだ警務隊本部や市議会を掌握しておらず我々、反ドラガゼス派の足下はグラグラと崩れそうな状況なのに彼はすぐ違う事に目を向け行動行動という。頼みの綱の警務隊司令部の高級幹部は皆一様に事態を静観する構えだ。このままでは今ここにいるのも危なくなってくる。
「ガルシアヌス、その情報の出所は?」
「俺の部下が聞いてきたらしい。早く行こうぜ」
「ふぅ――」
魔界煙草を吹かせながら俺は目を閉じる。どうやらこうなってくるととるべき手段は一つしかない。
「わかった、君は一足先に反ドラガゼス派の部隊を率いてラバイトス商会へ向ってくれ」
「ロバートは来ないのか?」
「俺はちょっとやることがある。君の実力を見せてくれ」
「おぅ、わかった。じゃあ先に行ってるからな!」
そう言い残すとガルシアヌスは部下を引き連れてラバイトス商会へ向かった。
***
静かな幕僚談話室で俺はそっと目を閉じる。やはりドラガゼスを取り逃がしたのが致命的だった。それにあの秘書官のパトリキオス。奴はドラガゼス以上の切れ者だ。それにユキオスや町衣紋もドラガゼスについたという。このままでは――。やむ終えない。
「ニコライズ・巡防司・頼勝はいるか?」
「ハッ! ここに控えております」
振り向くとそこには彼がいた。さすが魔界忍法の実力者。さきほど町衣紋に敗れたとはいえまだまだ使える人材だ。
「ニコライズよ、君は配下の者と亡命を希望する反ドラガゼス派の軍人や貴族を連れて一足先に洋上で待機している改協条約適応型高速巡洋装甲保全艦オリリオン・パーシバルスへ向かえ。残念だが我々の敗けだ」
「ロバート殿、一見すると圧倒的に我々が有利では?」
「いや、ドラガゼス一派の方が一枚上手だ。我々は組むべき人物を間違えた」
「雇い主がそう言うなら……。了解した。ところでガルシアヌスはどうするのだ?」
「我々が逃げる時間稼ぎをしてもらう。しかし、ただでは敗けんぞ。俺が直接手を下してパトリキオスの命をいただく」
「パトリキオス!? そこはドラガゼスでは?」
「奴は危険すぎる。ドラガゼスはもう歳だが奴はまだまだ若い。それに――」
「それに?」
「いや、今話すのは止めとこう。これは極秘情報だからな。とりあえず君は亡命を希望する者を連れてオリリオン・パーシバルスへ向かえ。そして俺が来るのを待て。そのあとは晴司法都パルメクルへ向かう」
「パルメクルですか……。ロバート殿さすがです」
その時、ニコライズは俺の顔を見ながらニヤリと笑った。




