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第64話 天愛転~隊長のコーヒータイム②~

「隊長、久しぶりに俺とコーヒーを飲むか。農業珈琲アグニカルチャーコーヒーなら用意できるぞ」


「いや、実に心地よい申し出だがやめておこう。欧雅侍博士、さっそくアグニカルチャー・レクイエム・オメガ・紅を作動させたい」


「エネルギー充足率九十八パーセントだ。今すぐにでも極地地場に転送できるぞ。で、何をどこに転送させる気だ?」


「この愛・天務空星制大根てんむくうせいせいだいこんをユキオスのもとへ頼む」


「ほぉ……。愛・天務空星制大根とは――。君は世界ワールドを変える気か?」


「そんなものに興味はない。俺は同僚に正義の剣を渡したいのだ」


「剣か――。ものは言いようだな」

 欧雅侍博士はそう言うなりニヤリと笑った。


 ***


 愛・天務空星制大根。ラニバル・カナパニース文書によるとそれは伝説の魔界農法農業従事者『コルンスト・ナナバルヤ・パーニパパーヤーパー』が一度だけ生産できたと伝えられる伝説の魔界大根である。伝説によればこの大根を装備することによって空気中に漂っている『誰かを愛する心』を具現化した銀色に輝くつるぎ『ラブ・メガス・天・銀河』を聖着装備せいちゃくそうびできるといわれている。


「よく生産することができたな」

 転送準備に入っている欧雅侍博士は俺の目を見ながらそう言った。


「いや、これは偶然の産物だ。作り方を研究して生産したのではなく突然変異で偶然一つだけできたのだ」


「そんな大切なものを転送してもいいのか?」


「無論、構わない。小さな行動が世界を変えるのだ」


「そうか。ユキオスのもとへの転送到着時間は極地地場時間に換算すると明日早朝辺りになる。断言はできないがな」


「総装填転送後、次の転送シークエンスまでどのくらいかかるのだ?」


「早くて一週間はかかる。まだまだ試作段階だからな」


「わかった。では、頼む」

 俺は欧雅侍博士に希望を託した。


 ***


 ――ブイイイィ――ン!

 アグニカルチャー・レクイエム・オメガ・紅が勢いよく作動する。まるで今いる空間が震えているようだ。


「充足エネルギー解放、カルメンイオメガプラグ高度天空接続。くれないフレンイ統合空間装置安定領域に到達――。よし、最終転送シークエンスを隊長に譲渡――!」


「いいのか、博士?」


「もちろんだ。君が世界せかいを変える番だ。ぶっぱなしてやれ!」


「ふっ――。恩に着る。よし、三……。二……。一……。転送開始!」


「任せろ――! 充足エネルギー完全解放――。転送開始!」


 凄まじい音と共に煙が充満する。すごい、とてもすごいプレッシャーだ。あまりのまぶしさに俺は目をつむる。約一分後、俺が目をあけた時『愛・天務空制星大根』はそこにはなかった。


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