第63話 至高~隊長のコーヒータイム①~
「ふぅ……」
昼下がりの午後の日差しが眩しい。手をかざすと光輝く地平線。広がる世界。こんなにも世界は輝きに満ち溢れているのだ。
しかし、俺には悩みごとがある。昨日、町衣紋をドミルセーエフに送り出してから現状報告がないのだ。
もしかしてドミルセーエフには魔界電報局はないのだろうか――。そうも思った。しかし、ドミルセーエフ市は大都市。そんなわけもない。
「心配事がブラックコーヒーに染み渡るぜ……。苦い。苦すぎる」
俺の独り言が部屋に響き渡る。それにしても静かだ。主要農場幹部スタッフはドミルセーエフ市に行きパートタイムのゴブリンさん達も今は夏期休暇中。不意に目を閉じるとそこには暗闇が広がる。でも、怖くはない。自分一人が行う善行がこの世界を変えるのだ。ドラガゼス元首のことはもちろん心配ではあるが、ここはユキオスと町衣紋に任せるしかない。
「いや、待てよ……。俺が今、できること――あっ!」
その時、『ある事』を思いついた。そうだ、あれだ。農務転移極地地盤収束装置アグニカルチャー・レクイエム・オメガ・紅を使おう。まだ試作段階で連続使用はできないが仕方がない。
思い立ったらなるべくすぐ行動。これは俺の筆頭珈琲師匠であるブレムタイム・昂天敬君から諭された教えでもある。
俺は魔界農法活躍推進室へと向かった。
***
――トントントン……。
軽いノックをしたあと中へと入る。
「おぅゴルヌス隊長。まさかアグニカルチャー・レクイエム・オメガ・紅を使いたくなったのか?」
「そうだ。試作段階というのは承知している。しかし私は同僚を助けたいのだ。欧雅侍博士、よろしく頼む」
「私は過去、君に助けられた。だから私は今、ここにいる。それが答えだ」
欧雅侍博士はそう言うなりニコリと微笑んだ。




