第58話 会合
午後七時。人々が食事をとり余暇を満喫する時間帯。その時、俺は緊張の現場にいた。今、東洋のニンジャさながらに天井から下を覗いている。これができるのも代表オーナーであり俺達の協力者であるパロオゴスさんの尽力あっての賜物である。
「ハッハッハッ――!」
下の空間では勝ち誇ったような声が聴こえる。どうやらロバートさんの会合相手は昨日の夜一緒にいた軍服を来た人物らしい。
「どうだ、ロバート。君を植民地ハギュルネ群島の総督に任命しようと思うのだが」
「フフッッ……。ガルシアヌス、俺に政治は向かない。それにドラガゼス元首の遺体がまだ見つかってない。紫錫司のマントも掌握できていない。油断するな」
「安心しろ。トラヌス区にある奴の別荘に兵を向かわせている。きっと紫錫司のマントはそこにある。奴の遺体も時期に出てくるさ。五階は特に延焼が激しかったからな」
天井から二人の様子を見たところ町衣紋さんの指摘は正しかったようだ。それにロバートさんは『紫錫司のマント』というものを欲してる。
どうやら今回の事案の根は深くドラガゼス元首は謀略によってき窮地に陥れられたようだ。
***
――ガチャ。
彼らがいるVIP専用室の扉が開く。どうやらもう一人誰かがやって来たようだ。
「ネルス市議会議員殿よく来てくれた。ささっどうぞ座ってくれ」
「あぁ、失礼するよ」
ネルスと紹介された初老の男は疲れきった表情をしながらドシリと座る。なんだか眠たさそうだ。
「ガルシアヌスよ思いきった事をしてくれたな。こっちは議会を抑えることで精一杯だよ」
「ネルス殿。思いきった事をしたのは謝る。でも仕方がなかったのだ。好機を逃すことはできなかった。それに議会は反ドラガゼスだろう。そんなに思い悩むことはない」
「いや、事はそう簡単ではない。議員は皆、警務隊がやったのだと噂しているよ」
話の内容的にはネルスという男はロバートさん達に与しているのだろう。しかし、気になる。彼等の黒幕であるロバートさんの真の目的が。
「で、ガルシアヌスよ。君はこれからどうするのだ?」
「もちろん決まってます。まずは警務隊主導の政府をつくります。そこでネルス殿には議会工作をお願いしたい」
「また無理難題を……。それにドラガゼスは本当に死んだのか。話によるとまだ遺体が見つかってないそうじゃないか」
「もうすぐ見つかりますよ。今、私の配下の兵士が捜索中です。もはや発見は時間の問題です」
「だといいが――。ドラガゼスは官民を問わずとても人気の高い人物だ。議会だってその声を無視できない。ドラガゼスの安否が確認できるまでワシは動かんぞ!」
どうやら彼等のグループの意見は一致してないらしい。ここに俺達が付け入る隙がありそうだ。これは『ある場所』に向かった町衣紋さんに報告しないといけない。もし『あの連絡』がもう少し遅かったら……。その言葉が脳裏を過る。とりあえず今は町衣紋さんの活躍に期待するしかなかった。




