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第4話 切り札との出会い

 とても静かで平和な草原地帯をけて、俺はベンじいがいるというパン屋に来ている。隊長の言うように本当に彼はここで働いているのだろうか。そんな疑問が脳裏をよぎる。もしも伝説のスペシャリストであるベンじいを仲間にできたなら、きっとラストグレードサンダーデーモンのフランソワちゃんへの対応も楽なものになるだろう。ここは何が何でも仲間にしないといけない。そんな覚悟をもって俺はパン屋のドアを開けた。


「こんにちは……」

 そう言いながら店内を見回す。おいしそうなパンがところ狭しと棚に置かれている。


「おぅ!いらっしゃい!パンをたくさん買ってくれい!」

 店の奥から見るからに強そうな威勢の良い大男がおどり出てきた。


「パンは未来に向けて走ることに欠かせない力だ。夢や希望も大切だ。しかしまずはパンだ!お前はなぜ生きている?その生きるみなもとはパンの力だろう!」


 ……。ダメだ。話が通じる相手ではない。それにしてもこの世界の住人はなんでこんなに熱血な人達ばかりなのだろうか?いや、落ち着くんだ俺。このパン屋のおっちゃんにベンじいのことを聞かないと。


「あの、すいません。ここで働いてるスペシャルなベンじいさんに会いに来たのですが」


「ベンじい?あぁ、彼なら風邪かぜを引いて今ずっと休んでるぜ!」


「なんとぉ!?か、風邪かぜを引いて休んでる!?ベンじいはスゴイ人じゃないのですか?」


「スゴイ人?ベンじいの過去のことは知らねぇが見た感じ普通のご老人だぜ」

 パン屋のおっちゃんは威勢良くそう言った。なんてことだ。この瞬間、ラストグレードサンダーデーモンと交渉&対決する上で必要な切り札を風邪によって失ってしまった。


「まぁ、そんなに悲しむな。自分を貫き通せ。お前さんもし良かったら当店名物の召喚パンでも買わねぇか?」


「し、召喚パン!?なんですか?それ?」


「食べることで異界の門から幻獣げんじゅうを召喚するパンだ!一つ五千ゴールドと少しお高いが買って損はないぜ!」


 よし、買おう。

 ちょうど財布の中には五千ゴールドがある。ベンじいが風邪でダウンしているのならこの召喚パンにけてみるしかない。俺はその時、強くそう決断した。


「珍しいパンがあるんですね。よし、買います。どのパンから何が召喚されるのか分からないんですか?」


「残念だがそれは分からん。でも不安を感じることなんてない!どの幻獣も極めて強力なやつらだ!きっと君の力と勇気になるぞ!」


 よし、このおっちゃんの言葉を信じてみよう。俺は「今日の店長オススメ幻獣パン」と書かれていたメロンパンのようなものを購入した。


「おう!買ってくれてありがとうな。ちなみに召喚パンだがその効果は三分間しか続かないからな。そこは注意が必要だ。それじゃあ頑張れよ」


「わかりました。この召喚パンの力に期待しています」


 ユキオスは召喚パンを一つ手に入れた。


 ***


 賑やかなルバンガの町を遠目で見ながら俺は目的地へ向けて進む。十分ほど歩くと小高い丘の上にラストグレードサンダーデーモンの陣地のようなものが見えてきた。戦国時代の合戦の時のような幟旗のぼりばたが風にはためいている。


「おっ落ち着くんだ俺。俺には暗黒歩兵専用ソードと召喚パンがある。べ、別に戦うわけではない。俺はあくまでも交渉人。いや、かっこよくいうと軍使ぐんしなのだ。よし!」

 そう自分に言い聞かして俺はラストグレードサンダーデーモンの陣地に向けて歩きだした。


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