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第57話 町衣紋の提案

 ――ガチャ。

 静かなホテルの一室に鍵を締める音がこだまする。この部屋の中には俺と町衣紋さんしかいない。


「ユキオス、コーヒーはあるか?」


「コーヒーですか。永遠即席エターナルインスタントでよければ……」


「よし、それを所望しょもうするとしよう」

 町衣紋さんは古風な雰囲気をその立ち振舞いの随所に漂わせながらそう言う。とりあえず俺はコーヒーな準備のためにミニキッチンへ向かった。


 ***


 テーブルを挟んだ二人の前にはコーヒー。こういう緊迫した状況であるこそのコーヒーである。


「ユキオス、状況はどんな感じだ?」


「状況……。ですか。昨日の暴動でドラガゼス元首は行方不明。安否を確認しようにも首庁舎内に近づけません」


「そうか。ではユキオス、ロバートを見たか?」


「ロバートさんですか……。昨日会いました」


「奴は裏切り者だ」


「えっ――!?」

 あの陽気なロバートさんが裏切り者……。まるで状況が呑み込めない。


「お前勇者迎合派というのを知ってるな。奴はその一派だ。そして今回の事案の黒幕でもある」

 町衣紋さんは険しい表情を浮かべながらそう言う。これは予想外の事態である。


「ユキオス。俺はロバートの周辺を調査し奴の真意を探ろうと思う。君も力を貸してくれないか?」


「えぇ、それは良いですけど……。でもロバートさんが今どこにいるのかがわかりません」


「その点については安心していい。内部協力者によると奴は今日の午後七時に高級レストラン、ベルニア・カールトンで警務隊高級幹部と会合を持つ。俺はその場に潜入して奴等の目的を探る」


「あ、危なくないですか。町衣紋さん?」


「心配はいらない。ベルニア・カールトンの代表オーナーのパロオゴスさんも我々の協力者だ。奴等の企みを我々で阻止しよう」


 生死不明のドラガゼス元首。元首庁舎を占領し情報を遮断する兵士隊。そして、町衣紋さんが黒幕だと指摘する同僚のロバートさん。これらの疑惑の謎を解く『鍵』となる高級レストラン、『ベルニア・カールトン』


 俺がこれから取る『行動』は町衣紋さんの話を聞いた瞬間にすでに決まっていた。


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