第50話 到着! 海港都市ドミルセーエフ
ロバートさんの馬に揺られながら約二時間。途中休憩を挟みながらも俺達はドミルセーエフが見渡せる高台までやって来た。ここからは港町の全容がとてもよくわかる。
「大きい都市ですね」
「おうよ。なにせ都市人口は五十万人を越えてるからな。交易も盛んでこの港から各方面に航路が延びている」
「ロバートさんはここにどんな用事があるのですか?」
「旧友に会いに来たのさ。たしか元首庁舎の警務部で働いてるって言ってたな」
「奇遇ですね。私も元首庁舎に用事があるのです」
「おぅ。そうか。向かう先は一緒か。それじゃあ大門を潜った後はすぐに元首庁舎に行ってみようぜ!」
こうして二人は改めてドミルセーエフへ向かった。
***
交易が盛んということもあり町へ続く道はひっきりなしに馬車や人が行き来している。都市を囲む城壁の上には弓を持った警備兵が辺り一面を監視している。
「ユキオス知ってるか? うちの農場で生産した魔界大根もここから他の大陸へ運ばれてるんだぜ!」
「へぇ……。そう思うとなんだか感謝感激ですね」
「おうよ。ただしユキオスよ気を付けろ。ここは魔王様が統治する都市ではない」
「えっ――」
それはちょっと驚きだ。いったいどういう事だろう。
「ここドミルセーエフは自由都市だ。元首も市民権を保持した人々による選挙によって決まる。これは百年前に魔王府と市政府代表委員によって結ばれたニコファスバル敬虔条約によって固く守られている」
「そうですか。じゃあ俺達はこの門を潜った瞬間、外国人になるのですね」
「まぁそういうことだ。でも安心しな。ドラガゼス元首は善政を行う人物として有名だ。市内の治安も安定している」
「なら……。いいのですが――」
一抹の不安が過る中、俺とロバートさんは大門を潜った。
***
『賑やかな場所』これが市内を初めて見たときの第一印象だ。バザーや露店がところ狭しと並び、お客さんや通行人でなかなか前へ進むことができない。
「人……。多いですね」
「そうだな。馬を入域管理事務所に預けてきて本当に良かった」
二人でそんな会話をおこないながら前へ前へと進む。
「たしか元首庁舎はスタンティヌス区にあるんですよね?」
「あぁ、そうだ。ここから歩いて二十分ほどだな。夕暮れも近い。急ごう!」
二人は早足でスタンティヌス区へ向かった。




