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ユキオス外伝 超魔剣ザッスニコニスとの出会い

「はぁ…。隊長の剣がうらやましいな」

 ベンじいが勤めるパン屋へと向かう道中、俺は剣のことばかり考えていた。隊長が使う剣は魔剣フラガラックスといいあの「生きる伝説」とまでいわれ、魔王様から直々に正義師ジャスティスマスターの称号と終身名誉貴族の位まで与えられた魔界魔法剣製造技術者マクタニアス・サーニトゥス・ジージャーニーがその技術の粋をもって一生懸命作ったスペシャルなやつらしい。なんでそんなことを知ってるのかと言うと、この前、食堂で酒に酔った隊長がそう言ってたからだ。ちなみに嘘か本当かは分からない。

 それに比べて俺が愛用する暗黒歩兵専用ソードは大量生産品だ。誰が捨てたのかよく街角で錆びたやつが転がってる。まぁ、ちゃんと使うと信頼できる剣ではあるのだが。


「よし!せっかく町に行くのだから武器屋にも行ってみようかな」

 そんな小さな野望を抱くユキオスなのであった。


 ***


「オーイ!そこの旅のお方!ちょっと見ていってくだせい!」

 最初の目的地の前で見知らぬじいさんに話しかけられた。


「えっ?俺のことです?」


「おぉそうじゃ。私はこの近くで古ぼけた武器屋を営んでおるタケゾウと申す。さてはおぬし剣を探しておるな?」


「えっ!?なんでそのことを!?」


「その不安そうな顔を見れば一目で分かる。ちょっとワシの武器屋に来てみんかの?」


「そうですね。少し時間に余裕もありますし。実はちょうど今、町の武器屋に行こうとしてたのです。わかりました。ありがとうございます!」

 タケゾウさんの声に誘われて俺は彼が経営する武器屋へと向かった。


 ***


 店内はところ狭しと古今東西の武器が並んでいる。


「おい!若いの!まずはこの剣を見てみい。この剣はライズガスクロスベルマックスといいまたの名を神のイカヅチの剣ともいう。その昔、魔王宮廷親衛隊、暗黒十常侍あんこくじゅうじょうじの一人、ピクニック・レツゴウさんが使用していたという由緒ある剣じゃ」


「おぉ!よくわかりませんがなんだかスゴイ剣なんですね。それにしてもピクニック・レツゴウさん…。タケゾウさん!なんだか私、山登りに行きたくなりました!」

 俺は大声で自分の想いをタケゾウさんに伝えた。


「まぁ、そういう日もあるさ。やりたいことはやる。これ意外と大切なことじゃぞ。自分を貫き通せ」


「そうですね。ところでこの剣の値段はいくら位なんです?」


「そうじゃな…。安くしとくぞ。百万ゴールドでどうじゃ?お得じゃぞ?」


「やめときます」

 その時、俺は速答した。ちなみに今、財布の中にあるのは五千ゴールドしかない。てかこのおやじ価格設定が強気すぎる。


「そうか。残念じゃな。ところでお主、何ゴールドまで出せるのかの?」


「五千ゴールドでお願いします」


「五千ゴールドかぁ。わかった。少し待て」

 そう言ってタケゾウさんは奥の方へ入っていった。


 ***


「若いの!これなら五千ゴールドで売ってもいいぞ」

 約十分後、タケゾウさんは一振ひとふりの剣をもってやって来た。


「この剣は超魔剣ザッスニコニスと言っての。実はワシが若い頃に使ってた剣なのじゃ」


「えっ!?タケゾウさんが昔使ってた中古品を大切なお客に売るのですか?」


「失礼な。この剣はすごいものじゃぞ!なんと1度だけ異界の門から超魔神ザッスニコニスを超召喚ちょうしょうかんできるのじゃ!」


「ゴク…。超召喚…。そして超魔神ザッスニコニス!おじさん!その剣とっても欲しいです!買います!」


「あぁ、でも超魔神ザッスニコニスはもうワシが超召喚したから呼べないよ」


「もう帰ります」

 その時、俺は思った。このおやじはただの話好きのおっちゃんではないのかと。そして、もう早く帰ろうと。


「おう!若いの!また機会があったら会おうな」

 帰り際、タケゾウさんは俺に一言そう言った。


 ***


「はぁ…。新しい剣を買うのは止めよう。俺には腰につけた暗黒歩兵専用ソードがある!」

 武器屋を出てからの道中、俺は強くそう思った。山積みにされてた剣をもっとよく見たいとも思ったのだがそれはまた次の機会にしよう。今は任務に集中しないと。

 ただタケゾウさんのワクワクするような武器の説明は良かった。今度は武器を買うためだけでなく、タケゾウさんの話をゆっくりと純粋に聞きたいな。


 ユキオスはタケゾウさんとの出会いを通じてまたひとつ成長した。


 こうして俺は改めてベンじいが勤めているパン屋へと早足で向かった。


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