第47話 ドキドキの馬小屋
馬小屋内は暑さでムンムンしている。ここ最近の日照りがその原因かもしれない。繋いである馬は全部で五匹。さて、どれを貸してもらおうか……。
「私のお薦めは右から見て三列目にいる馬だね」
「そうですか。名前はなんと言うのですか?」
「う――ん。特に決めてないねぇ。馬三号でいいんじゃないの?」
「はぁ、そうですか」
ネーミングの件は敢えて触れないようにしておこう。それにしてもたしかに威勢の良い馬である。速そうだ。
「ただしこの馬は持久力がない。すぐバテてしまう。その分、速いんだけどねぇ」
その一言を聞いた途端、俺の考えが変わった。海港都市ドミルセーエフは遠い。やはりここは持久力のある馬の方がいいだろう。
「リコさん持久力がすごい馬はどれですか?」
「持久力ねぇ。馬じゃなくてもいい?」
「はい!?」
逆に質問された。俗にいう質問返しというやつか。
「え、えぇ。別に馬にこだわりはありませんが――。」
「よしわかった。ちょっと待っててな!」
そう言ったあと、リコさんは奥の方へ走って行った。
***
「お待たせ。これに乗りな!」
リコさんは手綱を引きながら見たこともない生き物を連れてきた。色は黒色。角は四本。どっしりとした体つき。そして体長は約二メートルほどか。ギョロりとしたその目玉はギロリと俺を凝視している。
「リコさんなんですか、この生き物?」
「これは振豪雅城魔天極華牛ドゴシドゴジス・ゴゴバズズズさ。持久力はとってもすごいよ。余裕で一カ月は歩き続けることができる」
「おぉ……。それはすごい。この牛を貸してください!」
「でもねぇ一つ欠点がある。スピードがまるで遅いのさ。百メール移動するのに一分はかかる」
「ごめんなさい。やめときます」
俺は即答した。この牛に乗るくらいなら歩いていく。
「なんだい、そりゃ。せっかく奥から連れてきたのに……。おい、冷やかしは止めな!」
いきなり怒り出すリコさん。しまった。怒らしてしまったようだ。
「もうやめだやめだ。歩いていきな!」
「えっ――!?」
しまった。余計なことを言うべきではなかった。その時、俺は深く後悔した。




