第41話 続・隊長の恋④
「本当、あなた達は適当なんだから……。事前打ち合わせは副担任のササハラ先生に任せてたから農場スタッフの素顔までは把握してなかったけどまさかここまでとは!」
先生の説教は続く。未だに説教をされる理由がよくわからないのだが、そこはあまり深く考えないことにしよう。
「せ、先生。何をそんなに怒っているのですか。り、理由を教えてくださらないかでござる?」
相変わらず隊長の話し方がおかしいのだが、ここはあえてツッコミをいれないでおこう。
「私が怒ってる理由――。いいわ、教えてあげる。あなた達、今日の昼御飯の準備をしてないそうじゃない。さっき優しいゴーレムさんが言ってたわよ!
」
「あっ!?」
俺達はすっかりあることに気がついた。そう言えばそうだ。生徒達三十人分の昼御飯を準備していない。副担任のササハラ先生との打ち合わせの時、昼御飯はこっちで用意しますと伝えてた……。
「先生、ご心配には及びません。これからスタッフ総動員で準備します。腕利きの料理人もいますので旬の野菜を使った料理の数々を楽しみにしていてください!」
「そう……。なら、楽しみにしてるわよ。隊長さん。今回の研修対応次第で学校からの寄付金の額も変わってきますからね」
そう言い残してハヤシマ先生は違う場所へ移動した。
***
「隊長……。力関係は向こうの方が上なのですか?」
「ユキオス君。その事実を知ってしまったか。たしかにそうだ。実は近年、魔王府からの研究給付型農業水産開発振興費が減額続きでな。その分、協力提携関係にある学校からの寄付金に頼っている側面もある」
「はぁ……。農場経営も大変なのですね……。でも、どうして研究給付型農業水産開発振興費が減額続きなんですか?」
「うむ、研究給付型農業水産開発振興費というのは目に見える結果を出さなければ増額しないのだ。だからこそうちの農場は品種改良に取り組んでおるのだ。しかし、まだ研究段階。この品種改良が成功し量産出荷体制が整わなければ振興費の増額は夢の夢だな」
隊長は苦悶の表情を浮かべながらそう言った。
「おぉ、ユキオス。今は落ち込んでる暇はないぞ。大急ぎで生徒達の昼御飯を準備せねば。ユキオスは近所に住んでるワカミヤ料理長を呼んできてくれ」
「えっ――。ワカミヤ料理長はたしか自分探しの旅に出ているんじゃ……」
「そうらしいがどうも彼は家に居るらしい。連れてきてくれ」
「わかりました。ちょっと行ってきます」
俺達は何か大切な事を忘れているような気もするが……。いや、今はあまり深く考えないことにしよう。
こうして俺はワカミヤ料理長の家に向かった。




