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第39話 続・隊長の恋②

 魔王立西部魔法実用農業高等学校。今年で創立140年を迎える歴史ある農業高校である。創立者であるゴゴガルド・ノウスハウスノウススハ・センクスブロックダス三世は魔界農業界を今の水準にまで高めるきっかけをつくった偉大なる農業水産英雄のうぎょうすいさんえいゆうであり、初めて魔界メダカの養殖に成功した強者きょうしゃでもある。

 ちなみに彼の名言の一つである『諸君、前を見ろ。魔王様が統治するこの地平線全ての土地が我等の耕作地である。精進せよ!』はこの世界に暮らす人民に広く知られており、教科書にも掲載されているほどである。

 ちなみにこの農業高校で学べる科目も幅広くここを巣立っていった生徒達は各方面で絶賛大活躍中である。


 ***


 太陽が空に昇り今日の暑さを感じさせる空気を帯びた午前十時。その時、俺は農場正面ゲート前にいた。遠目からでも農業高校の生徒がこっちにやって来るのが分かる。


「何で俺が案内担当なんだよ……。まったく」

 隊長の恋を応援するとは言ったが案内担当をするとは言ってない。それに実は今日寝不足である。ヤーサナ・フールの件が頭の中で再生されてなんだかあまり寝ることができなかった……。


「あっおはようございます――。農場はこっちです!」

 大声でそう言いながら生徒達を誘導する。


「すいません農業スタッフさん。トイレはどこですか?」

 いきなり生徒の一人に話しかけられた。


「トイレはこの先にある宿舎にありますよ。この農業に設備の行き届いたトイレはあそこだけだから注意してね!」

 さりげなく重要なことを言葉の中に織り混ぜながら俺は彼に説明する。我ながらあっぱれである。


「わかった……。ありがとうございます!」

 そのセリフを残して彼は走り去って行った。隊長の話によるとヒカリちゃんは魅力的な瞳の持ち主で制服がとてもよく似合うサラサラとした黒髪ミディアムヘアーらしいが……。今のところ発見できていない。そして、発見できないまま時間だけが過ぎていった。


 ***


「あぁ、隊長ここにいましたか。報告があります」

 俺は農業研修指導の空いた時間を利用して隊長のもとへ向かう。


「ユキオス君どうした。ヒカリちゃんはいたか?」


「いえ、それが……。居ないのです」


「いない――。すまないユキオス君。そんなはずはない。担任の先生ティーチャーがくれた研修生徒氏名名簿にはちゃんと名前が書かれていたぞ!」


「そうは言ってもたしかにいませんでしたよ。引率者のゴールハウス・ハヤシマ先生に聞いてみては……」


「うむ、そうだな。ユキオス頼む。俺はこの後、急用があるのだ!」


「またそれですか……。はいはいわかりましたよ。第二級功労魔界農業士推薦の件、本当に頼みますからね!」


「もちろんだとも。男に二言はない」

 大丈夫かなこの人――。と思いながらも今は隊長を信用するしかなかった。


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