第36話 破壊指令!魔弍空兵備装ヤーサナ・フール④
「状況は理解した。用は俺の弓が必要ということだな」
まるで覇気を感じさせるような表情で町衣紋はそう言う。彼の狙撃能力を駆使すればマスターパーツの破壊も充分可能だろう。ここに来て希望の光が差し込んできたような気がした。
「フッ――。ここは俺に任せな。このコゴコナスの弓を駆使すればすぐに事は済む」
「町衣紋さんコゴコナスの大弓ってまさか……」
「ユキオスお前はなんでも知ってるんだな。知識を豊富に持つものが強者の道への片道切符をもっているのだ。これからのお前を楽しみにしている」
町衣紋はそう言うなり俺に向けて微笑んだ。
――コゴコナスの大弓。世界の伝説や神話を記したラナバル・カルパニース文書によるとそれは伝説の怪鳥ヘジジラゴーンを一撃で撃ち落としたと言われる強者専用の弓である。その弓の弦はとても硬く凄まじい握力をもった人物でないと一発撃つこともまるで不可能である。
「まさかそんな強力な大弓を持ってるとは……。お主は真の強者だな!」
その事実を知るなり善蔵さんは驚きをもった表情で一言そう言った。
***
町衣紋さんはコゴコナスの大弓を大きく構えヤーサナ・フールのマスターパーツを狙う。その目は鋭くまるで大鷲に睨まれたような気持ちになる。
「気持ちじゃ。気持ちが大事じゃ」
斜め横から善蔵さんの声が聴こえる。
「もちろんだ――。俺の腕前を凝視しろ!」
そう言った瞬間、ヤーサナ・フールのマスターパーツ目掛けて矢が放たれた。
――ボギョジュキャ……!
聞いたことのないような擬音が辺り一面に鳴り響く。どうやら狙った場所に命中したようだ。
「やったか――!?」
善蔵さんの顔がほころぶ。しかし数秒後、その微笑みは恐怖に歪んだ。
――ドーン!
付近に『何か』が着弾する。その音を聞いた途端、三人はとっさに身を伏せた。
「な、なんだ……。破壊したんじゃないのか――!?」
「いや、待て。状況を確認せねば!」
町衣紋と善蔵さんは必死にこの突然の事態の変化に対応しようとしている。
「まさか――。ヤーサナ・フールは超絶戦術形式を搭載しているのか!?」
善蔵さんはその驚愕の事実に心を惑わされた。
破壊したはずのヤーサナ・フールの予期しない反撃と俺達の混乱。その時、俺はこの急展開の事態に対応すべく自分が知ってる知識をフル動員して思案に耽った。




