第34話 破壊指令!魔弍空兵備装ヤーサナ・フール②
「狙いを定めろ。弾に魂を込めろ」
真横で善蔵さんはそう俺に囁きかけてくる。そうは言っても信号拳銃を使っての狙撃なんて不可能すぎる。そもそも信号拳銃というのは救難及び伝令に使うものである。狙撃用ではない。
「いや、善蔵さんやっぱり無理ですよ。当たる当たらない以前の問題です」
「迷うな。戸惑いを克服するんだ――」
「いや、だから……」
「ワシの友達のコルコピス・信振五郎もそうじゃった。奴は迷いをもったばかりに超恐竜メゴロジルドリゴスジスにやられた……」
「――!?」
その時、俺はあまりにも驚きすぎて声が出なかった。
――超恐竜メゴロジルドリゴスジス。それは暗黒超大陸ジゴスに生息する暗黒恐竜の一種である。その全長は大きいもので九メートルを超え性格も獰猛。もし万が一奴に遭遇したら祈る時間もないままにやられてしまうだろう。
「善蔵さん。まさかあなたは暗黒超大陸ジゴスに行った経験があるのですか?」
「フッ――。過ぎたことだ。その時の冒険譚はまた今度話すとしよう。ユキオスよ迷うな。感じるんだ」
善蔵さんはまるで達観した様子でそう言った。
「その話、楽しみにしてます」
「さぁ、魂をトリガーに込めろ!」
「はい!」
俺は狙いを定めてトリガーをひいた。
――シュポポーン!
七色の光を輝かせながら信号弾が飛んでいく。そして、ヤーサナ・フールの遥か手前で落ちた。
「……。それもっと飛ばないのか?」
「無理です……。善蔵さんは何か狙撃ができそうなものを持ってないんですか?」
「ワシか。あいにくワシは猟師といっても罠猟専門でな。武器は使わん」
「そうですか。なら打つ手なしですね」
「うむ参った。せめて弓でもあれば……」
「ザルトリッチさんに連絡しますか?」
「ダメだ。連絡手段がない」
「ならいっそのこと近づいてみます?」
「ダメだ。危険は最小限にしたい。ワシはゴルヌス隊長と約束したのだ。お前を無傷で下山させるとな!」
「善蔵さん――!」
俺はその時、山に生きるという意味を知った。登山パートナーを最後まで心配する善蔵さんこそが真の強者なのだ。




