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第27話 魔界イノシシが山裾に降りてきた理由⑤

「まぁ、適当にイスに座ってくれ。ユキオス君は――エスプレッソで良いかい?」


「はい。お願いします」


「善蔵さんは……。たしか蒼夢正義珈琲ブルードリームジャスティスコーヒーだったっけ?」


「よろしく頼む」


「わかった。ちょっと待っててくれ」

 そう言ってコルコフチョルバルさんは会議室の隣にあるミニキッチンヘ向かった。善蔵さんが頼んだ蒼夢正義珈琲ブルードリームジャスティスコーヒーがとても気になるが……。まぁ、ここはあえて触れないようにしておこう。


「ユキオスよ。コルコフチョルバルはああ見えて歴戦の戦士ソルジャーだ。なんとジャラルブーブン島への農業応援経験もある。ラフで軽い初老の男性だと思ったら痛い目を見るぞ。いいな。決して無礼の無いようにな」


「ジ、ジャラルブーブン島!?」

 その時、俺は驚きのあまりついつい声を出してしまった。ジャラルブーブン島といえば魔王軍三大大将軍の一人である百天聖究司ひゃくてんせいきゅうしバルゴザマバートン率いる特務農場建設大隊とくむのうじょうけんせつだいたいが試験的に魔界キノコの栽培を行っている島である。噂では魔界キノコに対する方向性の違いから仲間内での争いが絶えないらしいが……。そんな島に農業応援として派遣されていたのならかなりの強者つわものである。


「お待たせ。コーヒー入れたから飲んでくれ」

 ガチャリと扉が開いた後、コルコフチョルバルさんが戻ってきた。そして彼は手際よくコーヒーを俺達の元へ配ってくれた。


「コーヒーを飲みながら聴いてくれ。まずこのホムラス山は――」

 そして勢いよくコルコフチョルバルさんは話し出す。まるで結婚式の司会のような口調とウィットに富んだジョークを随所に散りばめた彼の話に俺は夢中になった。


「さて、これからユキオス君と善蔵さんにはCー5地点に調査にいってもらいたい。ここは有力な魔界イノシシの生息地域になってるから何らかの手がかりがつかめると思う」


「Cー5地点には北峰きたみねを通って行くのが近道なんですよね?」


「そう――。なるな。でもこの北峰は道が細いから転落には注意してくれ。ちなみに入山口にゅうざんぐちからCー5地点まで北峰を通ればだいたい二時間弱で到着できるはずだ」


「わかりました。コルコフチョルバルさん今日はありがとうございました。コーヒーおいしかったです」


「ここから君達の無事を祈ってる。あと、もし十二時間経過しても下山してこない場合、山岳警備救難隊に連絡するから。だからその辺りの事は心配無用と思っててくれ」


「了解です。では、行きましょう善蔵さん」


「そうだな。コルコフチョルバルよ。また昔話に花を咲かそうな!」


「あぁ、もちろんだ。善蔵さん。ホッチョイ峠奇襲戦での話をまた聞かせてくれ」


 こうして、俺と善蔵さんはホムラス山を登り始めた。


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