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第24話 魔界イノシシが山裾に降りてきた理由②

「善蔵さん……。はどこにいったいのだろう?」

 待ち合わせの時間が過ぎて早十分。未だに今回パートナーを組む善蔵さんは現れない。


「もしかして――体調不良とか?」

 そんな言葉が脳裏を過る。過去にも同じような理由で『ベンじい』が来なかったし。いったい善蔵さんの身に何が起きたのだろうか。それにしてもこのホシフルハフスス村はのどかだ。ベンチでは村人と思われる男性が朝からぐっすりと眠りに就いている。


「あぁ、なんだか俺も眠たくなってきた」

 そんなことを呟いた時だった。


「おう、若いの。遅くなってすまんな」

 振り向くとそこには登山服に身を固めた初老の男性。善蔵さんがいた。


「初めまして。ユキオスと言います。あなたが善蔵さんですか?」


「おうよ。お茶漬け食べてたら遅くなってしまっての。その前にお前はそんな姿で山に挑む気か?」


「えっ!?」

 そう言われ自分の服装のファッションチェックを行う。たしかに――。作業服の下はただのTシャッツ。そして、靴はスニーカー。首もとにはオシャレなネックレス……。そう言われてみればたしかに山登りを行う服装ではないのかもしれない。


「山は生き物だ。耳をすませば山の息づかい、そして声が聴こえてくる。今、ワシらがいる大地とはまるで違うのだ。今のお前を山に連れていく訳にいかん。出直してきな!」


「えっ――。いや、そういわれても今回は隊長権限命令でして……。それにこの任務は魔界動物生態保護条約特別査察条項に基づく正式な任務なのです!」


「うむ、そうか。お主の言いたいことは理解した。しかし、その服装で山登りを行うのはダメだ。少し寄り道にはなるがこれから登山ショップへ行こう」


「と、登山ショップ……。この村にはそんなお店があるんですか?」


「おうよ。昔からこのホシフルハフスス村はホムラス山への入山町にゅうざんまちとして機能しておる。まぁ、町というより村だがな。だからもちろん登山装備ショップもある」


「わかりました。行きましょう」

 たぶんここで登山ショップに行くのを断ってしまったら今回の目的地ホムラス山に行くことはできないだろう。なら……。仕方がない。登山服の購入費用が必要経費と認められればいいのだが――。


「おう、ユキオスよ。不安な顔をしてるがどうした?」


「いえ、登山服の購入費用が経費でおちればいいなぁとか考えていまして……」


「お買い上げ後の領収書は必ず貰っとけよ。これは紳士しんしとしてのマナーだ」

 善蔵さんは挑戦的な表現で俺に対してそう言った。こうして俺と善蔵さんは登山ウェアショップ『スタイリッシュハヤブサマウンテン・スマートフランシスコ』ホシフルハフスス村店へと向かった。


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