第21話 ユキオス救出作戦③
「ゴルヌス隊長久しぶりじゃな」
医務室の扉が勢いよく開き中から初老の老人が現れた。
「マシニッサ先生。お久しぶりです。軍医時代はお世話になりました」
「何言っとる。お互い様じゃ。そなたの活躍で何度ワシが所属する軍団本部が助けられたか。のぅ――蓮闘極侍頭連星ダカイハルマン・シルクスバース・ゴルヌスよ」
「やめてください、先生。その諱はもう捨てました」
そう言い終わる前に俺は先生に対して敬礼をした。そんな俺をマシニッサ先生はにこやかな視線で見つめている。
「先生、今日は救ってもらいたい人がいるのです。横で寝ているユキオスというものです。彼はこの農場で欠かすことのできない大切な部下なのです。よろしくお願いします」
「何、心配するな。状況は優しいゴーレムさんから聞いた。なんでも彼は地獄ヘビと融合したそうじゃの」
「はい、彼は感受性豊かな人材なのです。だからこういう事態になったのでしょう」
「うむ、これは珍しいケースじゃ。十年に一度くらいの。北星錬成の秘術を行うとしよう」
「ユキオスは救えるのでしょうか?」
「安心せぇ。第三次マルコフスフクスフ平原包囲戦での苦境を考えると今回の事案は優しいものじゃ」
そう言った後、マシニッサ先生は慎ましいような笑みを俺に見せた。ちなみに先生は小柄ではあるが、その胆力はまるで大海原のように広大で広くその時、俺はまるで一個師団の軍勢に睨まれたような、そんな不思議な気持ちになった。
***
「ゴルヌス隊長。ジャラストジエルムンスクフスクスの妙薬はあるか?」
処置の最中、不意にマシニッサ先生は俺に対してそう聞いてきた。
「ジャラストジエルムンスクフスクスの妙薬ですか――。申し訳ありません。今現在、その妙薬は切らしているのです」
「心配するな。ジャラストジエルムンスクフスクスの妙薬の配合方法は?」
「ハッ!」
そうだ。地獄大根と塩と昆布だ。さすが先生。物事の心理を全て心得ている。きっとこれらの材料がこの農場で手に入ることも最初から了解済みなのだろう。
「先生、ちょっと材料を揃えてきます!」
「六分じゃ。それ以上は待てん」
「はいっ!」
そして俺は一目散に走り出した。地獄大根を手に入れるために。そしてユキオスを救ってマシニッサ先生に俺の頼もしい姿を見せるために。




