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第180話 スベルフスキー館の謀略②

 自由ボンズゴフ臨時建国委員会と名乗る奴等に拘束されて連れてこられたのは比較的大きな部屋であった。ここは貴賓室だろうか。とりあえず内装は豪華である。目隠しをされていたために詳しい場所はわからないが、恐らくスベルフスキー館の広大な敷地内のどこかだろう。武器を取り上げられたので抵抗するすべはないので、ここはおとなしくしていた方が良さそうだ。そして武装隊員に拘束を解かれた私の目の前には屈強な姿をした一人の男が立っていた。


「手荒な真似をしてすまないな、柴田殿。今の段階で騒ぎを大きくしたくなかったのだ。私の名前はニコライズ。自由ボンズゴフ臨時建国委員会委員長だ」

 委員会委員長と名乗る男は無表情で一言そう言った。室内にはこの男の他に私をここまで連れてきた武装隊員が五人。それにしても自由ボンズゴフ臨時建国委員会とはどの程度の規模の組織なのだろう。現段階では推測のしようもない。


「ニコライズ殿、あなた方の目的はなんだ。もし、政府転覆……。いや、クーデターの真似事をしようとしてるのなら止めるんだ!」


「柴田殿、これは真似事ではないのですよ。貴殿も知っているはずだ、ハルジル・タイプモォルホルドンの指揮制御上位パーツの落下を。これが我々の決起の合図になるのです」


「たとえ現市政府幹部を亡き者にしたとしても魔界国家ボンズゴフ駐屯軍がすぐに反撃を開始する……」


「失礼します!」

 その時、貴賓室のドアが開いて新しい武装隊員が入ってきた。その手には一枚の紙を持っている。


「委員長、自由ボンズゴフ臨時建国委員会第一任務隊隊長メネリク少佐より報告です。ボンズゴフ港シシプス地区駐ボンズゴフ魔界国家陸軍本部制圧完了。我が委員会の降伏勧告を受け入れての制圧のため双方に怪我人等なしとのこと。シシプス橋を落として外部との連絡遮断完了。なお、武器庫内には多数の武器弾薬あり。現在、委員会本部に移送中とのこと!!」


「ハッハッハ……。柴田殿、貴殿の本国の軍はもろいな。永らく戦人いくさびとを経験していない兵は本物の武士もののふではない。多少の交戦は覚悟していたが、杞憂に終わったようだ」


「くっ……」

 駐屯軍がこうも脆いとはーー。内心驚きではあるが、終わったことは仕方がない。それにしても奴等の目的は……。


「ニコライズ委員長、結局あなたの目的はなんだ?」


「日付が変わる時間帯を持って我が自由ボンズゴフ臨時建国委員会はボンズゴフ市の自主独立及び魔界国家編入条約の即時無効宣言をおこなう。現市政府幹部と魔界国家との癒着や魔界国家追従主義による我が都市国家への悪影響を糾弾して、大陸情勢変革の先駆者パイオニアとなるのだ!」


「魔界国家離脱だとーー。そんなことをしたら、魔界国家正規軍及びその傘下の諸同盟軍が……。ま、まさか!?」


「柴田殿、政治は裏と表の集合体、いや……。議場に場を移した喜劇、深読みするとある意味コメディとも言えるかも知れませんな。魔界国家正規軍及び諸同盟軍の大軍勢がここボンズゴフ周辺に集結した時、首都ティグラノケルタスは軍事的空白地帯となる。ここから先は貴殿も想像できるはずだ」


「『敵の敵は味方』ということか……」


「ご名答。安心して下さい。ハルジル・タイプモォルホルドンは擬装陽動工作です。既にソフスコキ市長以下市政府幹部との政治的取引は完了しています。彼等の身柄はパルメクルに秘密裏に移送されその後は我が御大将であるロバート殿の保護下におかれるでしょう」

 ニコライズと名乗る男は静かにそう言った。魔界国家の主導する大陸の情勢変革ーー。それはある意味、的を得ている。後はゴルヌス隊長がどう出るかということか。


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