第178話 海中指令!!潜った先のアイツ⑤
「初めまして! カルロス・ムラといいます! 孤軍奮闘中の皆様に加勢するべくただいま参上しました!」
突撃挺からこちらのボートに乗ってきた彼は緊張した様子でそう言った。余程緊張しているのだろう。心なしか敬礼をしている手が震えている。
「カルロス君か。加勢ありがとう。私がこのチーム農場を率いているゴルヌスだ。右にいるダイバースーツを着ているのが隊長代理副補佐の任にあるユキオス、そしてその隣にいるのがナナセさん。彼女は広域捜査官だ」
隊長はまるで台本を見て喋っているかのような様子でそう言った。それにしてもいつから俺は隊長代理副補佐に任命されたのだろうか。それに代理の副補佐って……。これでは出世してるのかしてないのか分からない。
「ゴルヌス隊長ーー。お会いできて光栄です。同志としての盟約を結び約四年。大義の星正侯玉天緑大旗の元に首都を取り戻す時がもうすぐやって来るのですね!」
「旗か……。たしかに今、首都に翻っている旗は昔とは変わってしまったなーー。それに君のお父さんにはとても世話になった……。おぉ、その話はまた今度にしよう。今はハルジル・タイプモォルホルドンを何とかしないとな。ユキオス、彼に今の状況を説明してやってくれ」
「えぇ、了解です」
そのあと俺は分かりやすいニュアンスを挟めながら彼に今の状況を説明した。
***
「……。何となく今の状況はわかりました。要するにハルジル・タイプモォルホルドンは自分から攻撃をしてこないけど、いるだけで危険ということですね!」
「まぁ……。そういうことだ。そこで君が持ってきた海中爆弾の出番ということだ」
「えぇ、そういうことになりますね。爆発するタイミングをヤツが潜む海域ポイント付近にセットしときます」
「その海中爆弾ってどのくらいの破壊力があるのかしら……。海の生態系を著しく破壊するようなら私の立場としては見過ごすわけにはーー」
さっきからなんだか口数が少なかったナナセさんが不安げな表情でそう言った。海の生物を心配していたからなんだか元気がなかったのかぁ。なんだかますます彼女のことが好きになったような気がする。
「ナナセ捜査官、心配ご無用です。海中爆弾は対機甲光拡音響破壊モードにして使用します。これが何かを説明するのは時間がかかるのですが、要は機械化されたものにだけダメージを与えるような感じです。ただ、調整に三十分ほど時間がかかります」
「……。この攻撃は君に任せてもいいのか?」
「もちろんです。それに私はあなた達の同志です。やらせてください。それに後顧の憂いは断たなければなりません。さぁ、隊長たちはスベルフスキー館に向かってください!」
「カルロス・ムラ准尉、生きてまた会おう」
「初対面の後にやられはしませんよ。私は生まれてから今まで首都である慶柱・ティグラノケルタスに星正侯玉天緑大旗が翻っているところを見たことがありません。ぜひ見せてくださいね!」
「ありがとう。任せてくれ」
隊長はいつものどこか適当な隊長ではなかった。そこにいたのはまさに王族たる将官だけが身に付けることを許された赤紫色のマントを身に付けた男、『ゴルヌス准将』であった。
「……。ねぇ、ユキオス君、なんだかいつもの隊長さんじゃない雰囲気ね」
「えぇーー。まさに生まれながらに身に付いているセンスってやつですかね」
ナナセさんに言われた後のゴルヌス隊長は今以上に頼もしく見えた。