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第160話 船はもうすぐ進むよ

「若造、よく持ってきてくれたな、それだ!」

 俺が船長にトォクンポウンニーをニッニラポイントで持っていくなりおっちゃんは目の色を変えて一言そう言った。おそらく今度は正解トゥルーなのだろう。船長の目の奥が笑っていた。


「こ、これで船は直るんですよね?」


「結果を焦るな若造、調子に乗るなよ。目の前の課題を終わらせるからこそ価値の想像に繋がる。要は重心ハードハートだ!」


「はぁ……。そうですか。ところでなんで古代ジャラルファラステ語を知ってたんですか?」


「俺は魚雷挺に乗る前は海軍の暗号通信員をしていてな。第三次ボグローゾフ海戦を知ってるか――」


「第三次ボグローゾフ海戦と言えば……。今から約三十年前にパルメクルと譚於海上盟約連邦たんおかいじょうめいやくれんぽう郎島オトーの領有権を巡って断続的に発生した局地的紛争ですよね。船長も参戦してたんですか?」


「そう言うことだ。男が言霊ことだまを語るときはそう多くの言葉は必要ないだろう。察してくれ」

 その時、船長は深く目をつむった。おそらくたくさんの波乱アドベンチャーが彼に襲いかかってきたのだろう。この件に関しては俺はあまり深く追及しないことにした。


「――。もう戻っても良いですか?」


「世話になったな、若造。お前の行く末にたくさんの幸があることを願っとくぜ」

 その時、船長は大粒の汗をかきながらニコリと微笑んだ。その顔を心で拝んだ後、俺は船内へと戻った。


 ***


「首尾よくいったの?」

 席に着くなりナナセさんが俺の顔を見ながらそう言ってくる。なぜか彼女の表情はどこか明るい。たぶん俺の表情を見て船のエンジントラブルが直りそうだということを察したのだろう。流石である。


「動き出すよ。船長も俺にもういいよ的な事を言ってたし」


「まぁ、海上にいる以上は鉢巻きおばさんの追撃も無理でしょうし別に急いではないんだけどやっぱり早く魔界国家に帰りたいわよね。この一連の出来事のおかげで口の中に大きな口内炎ができたわよ」


「それは――。痛そうですね。心中お察しします」


「そこだけ敬語はやめてよ。あっ、ユキオス君何か音がしない?」


「音――?」

 そういえば地響きのようなものが聴こえる。たぶん船長の修理テクニックが軌道にのったのだろう。


 そして数分後、船のエンジンがけたたましく動き出した。


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