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第159話 ニュアンスと意味の相違と向かう勇気

 船長のもとに舞い戻りハッチの下を覗き込む。そこには頭を抱えながらも果敢に機械と格闘している船長がいた。


「立山立さん持ってきました!」


「船長と呼べ若造、年上を舐めんなよ。まぁいい早く貸せ!」


「えっはい、どうぞ」

 正直、船長の上から目線には腹が立つが今は状況が状況だ。仕方がない我慢しよう。そう思う直した俺は持ってきた物を渡した。


「若造、これはなんだ!」

 数秒後、船長の怒鳴り声がハッチの下から聞こえてきた。


「それは――。たぶんトォクンポウンニーですけど」


「違う、このとんがり具合をよく見ろ。これはトィートハゥニーラっていう部品だ。トォクンポウンニーじゃない。出直してこい!」


「――!?」

 船長と俺の意思の相違が表面化したその瞬間、全身に衝撃が走る。内心、『わかんねぇよ船長お前が自分で取ってこい』という心境だがその言葉を喉元でなんとか我慢した。


「ど、道具箱はあってるんですね?」


「ノープログレムと言っておこうか。しかし肝心の重要部品が違うんだよなこれが。また取ってきてくれ、何回も言うがトォクンポウンニーはニッニラポイントで頼むぞ!」


「はぁ……」

 溜め息を大きくついた後、俺は再び船室へと戻った。


 ***


「ユキオス君、何かトラブル?」

 浮かない顔の俺の身を案じたのかナナセさんが一声かけてきてくれた。実はこの展開は俺の予期したものでもある。


「船長からトォクンポウンニーっていう部品を取ってこいと言われてるんだ。でもさっぱりどんなものかわからないんだ」


「トォクンポウンニーを持ってくればいいの?」


「そうですが……。ナナセさんそれが何かわかるとか?」


「えぇ、トォクンポウンニーは古代ジャラルファラステ語で『銀色のとんがっている大きなネジ』よ」


「こ、古代ジャラルファラステ語……!?」

 まさかこの場でそんな言葉のトラップが仕掛けられていたとは――。驚きである。それにしても船長が古代ジャラルファラステ語を話せるとは世の中何が起きるかわからない。


「ちなみにニッニラポイントは『袋入りのセットで』という意味だから。要するに船長が言いたかったのは『銀色のとんがっている大きなネジを袋入りのセットで』という意味ね」

 涼しげな表情で彼女はそう言った。謎が解けたのは嬉しいがどうして船長は肝心な用語にジャラルファラステ語を使ったのだろうか。

 これは本人に直接聞いてみる必要がありそうだ。


「ナナセさんありがとう。これで船長が必要な物を持っていくことができるよ」


「そう、がんばってね!」

 彼女の一言を背中で受け止めながら俺は再び操舵席へと向かった。


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