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農場外伝 その頃マルティネスさんは 後編

「はぁ、はぁ――」

 手に持つ火縄銃が重たい。装備してみて初めて竹槍との違いを実感できる。

 ルーキー・パートナー・ゴブリンのペンヤンが言うには乙種魔界大土竜は興奮しており手に終えない状態らしいが……。とりあえず現場に近づかないと何もわからない。


「とりあえず指揮テントを目指そう――」

 そう思い直した俺はまた一歩、また一歩と歩き出した。


 ***


 比較的背の低い牧草地帯を抜けてオルガヤ台地に足を踏み入れる。農場開拓小隊のテント群は倒されその事からもかなりの状況だったと推測できる。

 周囲の見通しが良好な分、逆に俺の緊張感も大いに高まる。どこだ、いったい奴はどこにいるんだ。

 何も起きないまま指揮テントまでたどり着く。

 ここも他の例に漏れずに力づくで倒されている。


 ――ガサッ……。ゴソ……。

 倒された指揮テントの中には誰もいない。幸いにも逃げ遅れたスタッフはいないようだ。


「ふぅ――。良かった」

 そう安堵したときだった。


「誰かいるのか?」

 外から声が聞こえた。その声に応えるために俺は外に出た。


「マルティネスか――」


「た、隊長――!」

 そこには上司のゴルヌス隊長が仁王立ちをしていた。その目は本気マジメである。


「総務部のゴー・レムさんから乙種魔界大土竜出現の連絡を受けてな。責任者として急いで馬で来たのだ」


「それはありがとうございます。しかし該当生物は今のところ目視確認できません」


「乙種魔界大土竜は地底低層獣だからな。普段はあまり地上には出てこない臆病な生物なんだ。それにしても――」


「それにしても?」


「匂うな」


「隊長、屁をこいたのですか?」


「いや、違う。魔界大土竜は井戸堀りごときでは反応なんてしない。ましてや人等を襲うなんて話は聞いたことがない」


「――。と言いますと?」


「オルガヤ台地の地下に何かがある。それも活動を開始した『特大な何か』が。おそらく乙種魔界大土竜はそれに驚いて興奮したのだろうな」


「特大な何か――。魔界大土竜が興奮……。ゴクッ」

 ここで俺は思いっきり唾を飲み込んだ。なんだかとても嫌な予感がする。


「――。ここは欧雅侍博士おうがじはかせに調べてもらうか。彼は地下研究の先駆者パイオニアだからな。調査結果が分かるまでこのオルガヤ台地は立ち入り禁止としよう。班長にもこの事を伝えてくれ」


「はい、わかりました」

 結局、農場自衛火器を使うことはなかった。しかし、今回の不審事案がのちのちののユキオス達に大きく関わってくるとはその時は予想だにしていなかった。


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