第148話 帰国行動①
思案の夜が明けてカーテンから陽の光が見える。感覚的にはまだまだ眠たいのだが、俺を取り巻く状況がそれを許さない。
一人行方知らずのゼガニカさんだが、ナナセさんいわく『彼は女子力が高いから大丈夫』とのことだ。本当に女子力が高いかどうかは不明だが、彼の現在地がわからない以上はこちらとしても動けない。
ということで今は彼の天運を信じるしかなかった。
「ユキオス君、起きてる?」
何か考え事をしていたのだろう。ナナセさんは少し浮かないような表情を浮かべながらそう俺に話しかけてくる。
「えぇ……。起きてます。意外とぐっすり眠りにつくことができたみたい」
「私は内心、何が起きるか分からなかったからドキドキしてたわ。でも意外と何も起きずに無事に朝を迎えることができたようね」
ナナセさんはある意味意味深なセリフをつぶやくがそれはそれで良いとしよう。とりあえず早く帰国しないと――。
「ユキオス君、カエル化した二人は?」
「ポシェット・ポーチに入れてます。カエル用の酸素も十分です」
「それが一番ね。カエル化の件はどうせホテル側もグルになって実行されたことでしょうから気をつかうこともないわ」
「……。ですね。じゃあ朝御飯でも食べますか?」
「先に行ってて。私は化粧をしてから行くから」
「あっ、了解です!」
俺は先に着替えを済ませると一階の食堂へと向かった。
***
「おはようございます。こんちには――!」
食堂に着くなり料理スタッフのお姉さんが元気のいい声を俺に伝えてくる。正直、朝なのか昼なのかわからない挨拶ではあるのだが、それはそれで良いとしよう。
「ここは――。バイキング方式ですか?」
「左様でございます。炒飯方式のバイキングです」
「ち、炒飯方式?」
「左様でございます。あまり深く思案なさらずにお召し上がりください」
「あっ――。はい」
炒飯と言えば俺の大好物である。その名を冠したバイキングなら別に悪い気はしない。むしろ嬉しい限りだ。
食堂内を見渡すとたしかに色とりどりの料理と炒飯がところ狭しと並んでいる。とても美味しそうだ。
そして俺は時間の許す限り朝食を堪能した。
***
「あっ――。オハヨー」
二杯目の炒飯を食べ終えてホットコーヒーを飲んでる時、ナナセさんがテクテクとやって来た。彼女の然り気無いようで輝きに満ちたナチュラルメイクは他の追随を許さないものだと思う。
そんな彼女は右手に新聞を持っている。
「これ、今日の朝刊。三面に興味深い記事が書いてたわ」
「興味深い記事ですか……」
彼女が持ってきたパルメクル新聞を俺は勢いよくひろげた。