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第145話 カエルだからこそ②

 食堂で炒飯と半ライスを心地好いほどに担当した俺は自室へ帰るべく早歩きで歩いていた。ちなみにナナセさんは先に戻っているはずである。なんでも『汗をかいたから早くお風呂に入りたい』なのだそうだ。その気持ちよくわかる、そしてナナセさんの後に俺も――。という考え事をしてるいる時だった。


「久し振りだな、ユッキー。いや、ユキオス」

 三階へ通じる階段を上ろうとした刹那、後ろから俺を呼び止める声がした。この声だけでもわかる。

 ヤツだ、ヤツが来たのだ……!


「ロバートさんですね」

 ここまでの低音で声を発したのは久方ぶりだ。それほどまでに俺は今、緊張をしているのだろう。


「暗黒騎士としての腕をあげたなユキオス」


「いや、まだ准暗黒騎士にすらなれていません。今はまだ農場スタッフのままです」

 この声を発するまで俺は後ろを向いていない。これは一種のプライドのようなものだろう。

 パルメクルにいるとは知っていたがまさかこの場所で居合わせるとは思っても見なかった。


「ふっ、お前ほどの強者が……。しかしどのみち魔界国家では真の暗黒騎士になれん」


「な、なに!?」

 突然のロバートさんの告白に心臓の鼓動が聴こえるまでにドキリとする俺。ヤツは何を言ってるのだろうか――。


「暗黒騎士は理想や概念ではない。それは目に見える純然とした暗黒力ダークパワーなのだ。しかしその直統星たる真の奥義は魔界国家では学べん。それが学べるのはここパルメクルなのだ!!」


「な、なに!」

 その瞬間、俺は振り向いてしまった。

 もう振り向かないと心に決めていたのに。

 そんな後悔が頭を過る。


「ロバートさんどういうことなんですか……」


「知りたければついてこい」


「クッ――」

 正直、悔しい。しかし俺の足はロバートさんについていく方を選んだ。


 ***


 ロバートさんはある一室で歩みを止める。ふと看板を見ると『タクティカルファッションラウンジ・とおる』と見事なまでの達筆書きで書かれていた。


「ここでは魔界鹿のジビエ料理が食べれる。これがまた酒に合うんだ。入ってくれ」


「その前に教えて下さいロバートさん。あなたの真の目的は何なんですか?」


「意志の統一だよ。時間はあまり残されていない」

 ロバートさんは虚空を見上げながらそう呟いた。彼の言った言葉、意味ありげだがいったい何をさすのだろう。


「――。ロバートさん、それじゃあ分かりません。しっかり説明してください!」


「まぁ、とりあえず中へ入れ。ボックス席でゆっくり話そうや」


「俺は今、入浴中の乙女ナナセさんを待たせてます。あまりゆっくりはしませんよ?」


ポエムだな。そんなお前、嫌いじゃないぜ」

 そう言いながらロバートさんは不敵な笑みを浮かべた。


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