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第13話 ユキオス潜入作戦③

 銃を突きつけられてからどれくらいの時が経ったのだろうか。実際は一分もたってないのだがとても長い時間が経過したように思える。


「いつまでも私を待たせるな! 誰の指示で動いてるのか言え!」

 中尉はますます語気を強めながら俺にそう言った。


「バルム中尉。残念だが俺は口は固いほうなのだ。言うわけがない」


「フッ――ならここでキミの人生は終わりだ!」

 奴はゆっくりと引き金を引いた。


 ――バァーン!!


 その瞬間、一発の銃声が辺り一面に響き渡った。その時、俺は撃たれて床に崩れ落ちたのかと思った。しかし、実際は違った。崩れ落ちたのはバルム中尉の方だった。中尉は右隣にいた仲間に撃たれたのだ。


「えっ!?」

 俺はいまいち状況が呑み込めなかった。コイツら仲間割れでも起こしたというのか。――でもなんで?


「ユキオス! 奴の拳銃を奪え!」

 中尉を撃った謎の男は俺にそう指示を飛ばす。その声に反応した私は転がり落ちた奴の拳銃を奪った。

 これで形勢は逆転した。残ったバルム中尉の手下とアントニウスさんは観念したのか手を上げて降伏する意思を示している。


「よし、ユキオスは応援を呼んできてくれ。俺はそれまでコイツらを見張ってるから」

 作業帽を目深に被った男は矢継ぎ早に俺にそう言った。


「た、助かりました。それにしても貴方はどうしてバルム中尉を裏切ったんです?」


「裏切った? ユキオスお前まさか先輩の顔を忘れたのか?」


「ん!?も――もしかして貴方は!?」

 その時、俺は自分の目を疑った。


 そこには魔王軍西部中央農業研修センターに地獄みかんの栽培法を学びに行ってたはずのヘルムートアイアンヘルムカイザーまさるさんがいたからだ。


「ヘルムートアイアンヘルムカイザーまさるさんお久し振りです! それにしてもどうしてここへ? 地獄みかんの栽培研修は終わったんです?」


「フッ――その話は後でしようぜ。まずは目の前の事案に取り組もうぜ」

 そう言うとヘルムートアイアンヘルムカイザーまさるさんはり気無く胸ポケットから魔界煙草まかいたばこを取り出した。その光景がなんだかとてもダンディズムでかっこよく見えた。


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